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2018年11月 6日 (火)

034-1 迷路荘の惨劇

 『迷路荘の惨劇』は、2度も改訂され長編となった珍しい作品。最初に発表されたのは、短編「迷路荘の怪人」で、昭和31年8月の「オール読物」に掲載された。このバージョンは、出版文芸社・刊の『金田一耕助の帰還』(現在は、光文社文庫所収)で読むことができる。

次いで、これを約3倍の長さに改稿した同名の中編が、昭和34年2月に出た東京文藝社・刊の『迷路荘の怪人』に収められた。この中編版は、やはり出版文芸社・刊の「横溝正史探偵コレクション---4」『迷路荘の怪人』で読むことができる。

 さらに、である。これをさらに約3倍の長さに改稿し、昭和50年に刊行したのが、この「迷路荘の惨劇」という長編にあたる。横溝氏は、以下のように書いている。

「 かつて単行本として刊行された中編物のなかに、一編だけ意にみたぬものがあり、その後絶版にしておいた小説があるが、あれを自分の納得のいくまで手を加え、書き足し、長編に仕立てなおしておいたらどうだろうと、昭和四十九年の夏から翌年の春へかけてその仕事に没頭し、かつては尻すぼみだった中編物を、八百枚の長編として洗いあげ、縫い直して、題も「迷路荘の惨劇」として刊行したが、これまた締切り地獄に責め苛まれることなく、たいへん楽しい仕事であった。」(『真説金田一耕助』から)

 横溝氏は、昭和49年には中断されていた『仮面舞踏会』を完成させて刊行。その後、翌50年にかけて、その余勢を駆って本作の改訂に取り組んだわけで、ファンにとってはまさにブームのおかげで金田一ものの長編作品が2作も増えたことは大いに喜ぶべきことだったろう。さらに「これを皮切りにこれからも、年に一作くらいのわりあいで長編を書いていきたいのだが」と意欲を燃やしたことを鑑みると、この「迷路荘の惨劇」の改作は重要な事件だったと言うべきだろう。

 この作品の表紙にも2つのバージョンがあり、最初ものは抜け穴に出没する片腕の怪人が描かれていて、その上に不敵に笑う女性の顔が浮かび上がるという構図になっている。巧みな構成だが、タッチはやや劇画調で杉本氏の作品の中では異色な趣きを持っている。ちなみに、TBS系列のドラマ版『横溝正史シリーズII・迷路荘の惨劇』は、昭和53年10月14日、21日、28日の3回にわたり、毎週土曜日22時〜22時55分に放送された。ちなみに、同年7月末に発行された16版が旧版の最終。この16版に「「横溝正史シリーズ」、茶の間に再登場!/第九弾「迷路荘の惨劇」」という緑の帯を付けたものがあり、テレビドラマ化に合わせて新カバーが用意されていたのだろう。

※確認済みの版
初版(昭和51年6月10日発行)
再版(昭和51年6月20日発行)
3版(昭和51年8月10日発行)
4版(昭和51年8月30日発行)
8版(昭和52年2月20日発行)
13版(昭和52年10月30日発行)
14版(昭和53年1月30日発行)
16版(昭和53年7月30日発行)<<旧バージョン最終

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