由利麟太郎

2018年10月28日 (日)

024-2 夜光虫

 『夜光虫』の第2バージョンは、前景右下に時計台を置き、血のように赤いバック地の上に男性の顔と人面瘡を描いたものに変わった。男性の顔は、第1バージョンの表紙に描かれた男性と、ほぼ同じ顔つきだ。

 このバージョンの文庫は、極めて珍しい。「緑三◯四」シリーズの杉本一文カバー文庫を収集する場合、008-3『黒猫亭事件・本陣殺人事件』ほどは高騰していないとはいえ、それと並ぶくらいの難関にはなるだろう。こちらの展示を企画したときも、どうしてもこの『夜光虫』第2バージョンが手に入らず諦めかけていたが、たまたま展示会場となった越前市中央図書館の蔵書を見てみたら何とこのカバー絵の文庫があったので、びっくり。偶然にしては出来過ぎた話だが、おかげでなんとか展示に間に合った。実物がほとんど出ないので確定はできていないが、昭和53年末に出た15版が旧版なので、それ以降、56年までに表紙替えがあったことになる。

※確認済みの版
18版(昭和56年8月30日発行)
19版(昭和57年10月30日発行)

024-1 夜光虫

 このブログでは、「緑三◯四」シリーズにおける杉本一文氏の全表紙バージョンを集めるための情報を提供することを目的としている。なので、この『鬼火』以降は複数バージョンを持つタイトルを優先して掲載していくことにしたい。

 『夜光虫』は、横溝氏が戦前に書いた由利先生・三津木記者ものの長編。初版のカバーは、時計の文字盤をバックに、無表情でこちらを睨む男女の顔を大きくあしらった絵柄になっている。モノトーンの色調が、不気味さを醸し出している。

※確認済みの版
初版(昭和50年8月30日発行)
3版(昭和50年10月30日発行)
5版(昭和50年12月10日発行)
8版(昭和51年10月10日発行)
15版(昭和53年11月30日発行)

2018年10月20日 (土)

018 仮面劇場

 『仮面劇場』は、由利先生・三津木俊助が活躍する同名長編と、三津木俊助のみが登場する短編「猫と蝋人形」「白蝋少年」2作を収めたもの。『びっくり箱殺人事件』同様、黒枠・白地仕様なので、少し杉本氏初期シリーズよりの香りがするが、丸い鏡に映し出された仮面を被った少年の顔は、すっかり杉本ワールドの世界観を示している。

 表題作の「仮面劇場」は昭和13年に「サンデー毎日」に原型となる同名の中編として連載されたが、その後、昭和17年に出た単行本では、数カ所を改訂の上、「旋風劇場」と改題されている。「改題の理由は、当時の時局として仮面などとは穏やかでないから改めたらよろしかろうと、どこからかお達しが出たとやら出なかったとやらで、出版社の主人が頭脳をひねって新しい題をつけてくれたのである。」と作者自身が述べている(角川文庫版「解説」から引用)。このバージョンは、出版芸術社・刊の『迷路荘の怪人 (横溝正史探偵小説コレクション) 』で読むことができる。ただし作者の改訂はそれにとどまらず、昭和二十一年には、「いままた三転して『暗闇劇場』。但し、こんどは題を改めたばかりではない。/小説の全部にあたって大改竄(かいざん)を加えた。新しく附け加えた場面もあるし削除した部分もある。さらに探偵小説の一番肝腎なぶぶんであるところの謎の中心部をさえ改めた。今後この小説はこれを以(も)って定本としたいと思っている。(同上)」と述べている(この改訂版は翌昭和22年に出版)。さらに、昭和45年に出た講談社版『横溝正史全集』において、題名のみ再び初出時に戻されたのを受け、本文庫版でも題名は「仮面劇場」に戻された、という次第である。

※確認済みの版
初版(昭和50年3月1日発行)
5版(昭和50年10月30日発行)
7版(昭和51年3月10日発行)
19版(昭和53年8月10日発行)

016 真珠郎

 「真珠郎はどこにいる。」

 現代の読者が読んでも、あっと驚かさせられる極めて斬新な書き出しに始まる横溝正史初期の傑作。作品の素晴らしさもさることながら、装画・装幀ともに出色。杉本一文氏が手がけたカバーの中でも、この絵のファンは多いのではないか。かくいう僕もこれは大好きで、何冊も集めてしまった(笑)。短編「孔雀屏風」を併録。

 2018年5月、「角川文庫創刊70周年 イベント」の一環で、丸善ジュンク堂限定・『真珠郎』が、杉本一文氏の表紙カバーで復刊された。この際には巻末に、

「本書の刊行にあたっては、『真珠郎』(角川文庫)を底本とし、『横溝正史全集<1>真珠郎』(講談社)を参考にしました。」

との注記がついた。奥書にも、「昭和49年10月20日 初版発行)/平成30年5月25日 改版初版発行」とあり、実質上の新版であることが示されている。1回限りの復刻ならこのような本文改訂まで行わないだろうから、今回は限定販売だが将来、レギュラー復刊されることも考えられるのではないだろうか。

※確認済みの版
初版(昭和49年10月20日発行)
3版(昭和50年1月20日発行)
7版(昭和51年2月20日発行)
8版(昭和51年8月30日発行)
10版(昭和52年1月30日発行)
13版(昭和52年9月20日発行)
14版(昭和52年12月20日発行)
15版(昭和53年1月30日発行)
25版(昭和59年7月30日発行)
参考 改版初版(平成30年5月25日発行)<<丸善ジュンク堂限定復刊

2018年10月 5日 (金)

009-2 蝶々殺人事件

 『蝶々殺人事件』の新バージョンは、当時、若き学生だった我々の世代の読者には印象の強い(いや強過ぎる)デザインだった。コントラバスのハードケースの中に女性の半裸死体が入っているというもので、物語に沿った内容ではあるものの、このような表紙の本を一般書棚に見ることは少なかった当時には、なかなか衝撃的ではあった。

※確認済みの版
18版(昭和52年9月30日発行)
19版(昭和52年12月10日発行)
25版(昭和57年7月30日発行)

009-1 蝶々殺人事件

 白髪の紳士・由利麟太郎先生と、花形記者・三津木俊介が活躍する通称「由利先生シリーズ」は、金田一ものと並び「緑三◯四」シリーズの一翼を担っている。全13冊。その中で、『蝶々殺人事件』は最有名作であり、かつシリーズ一桁台に収録するにふさわしい傑作だ。表題作のほか短編「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」を収録。初版の表紙では、赤一色で描かれた女性の裸体の上に、色とりどりの蝶々が舞っている。黒枠・白バックに水彩画風の色合いを持って描かれているのは、杉本氏の初期装画に見られる特徴でもある。それほど高価ではないけれど、市場に出た数が少ないせいか、あまりお目にかからない版でもある。

※確認済みの版
初版(昭和48年8月10日発行)
再版(昭和48年8月20日発行)
7版(昭和50年10月20日発行)

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