No.21−30

2018年11月 4日 (日)

030-2 貸しボート十三号

 『貸しボート十三号』の第2バージョンにも、やはりナンバー13のボートが描かれていて、モチーフ自体は同じ。ただし、全体のトーンはより洗練されている。水面には、恨めしそうな表情の女性の顔が浮かんでいる。完成度の高さから言って、作者にとっても自信作になったのではないだろうか。同じような絵柄になるが、それゆえに第1バージョン、第2バージョン、ともに集めたくなる文庫だろう。ただし、あまり市場に出ない本の一つだ。

※確認済みの版
21版(昭和59年7月30日発行)
22版(昭和60年12月20日発行)

030-1 貸しボート十三号

 『貸しボート十三号』・・・印象的な題名を持つこの作品集には、金田一ものの中編が3作集められた。巻頭の「湖泥」は、のちに「金田一耕助ファイル6」として出た『人面瘡』に収録されている。「堕ちたる天使」は、岡山の磯川警部と東京の等々力警部が顔合わせをする作品としても知られている。この文庫における杉本一文氏の表装画は、やはり表題作の「貸しボート十三号」を扱っている。ナンバー13をつけた無人のボート上に緑のコート、そして鮮血。ここで杉本氏はブラシではなく絵の具を使ったようで、普段とはややタッチが異なっているのが特徴と言える。

 この作品も改作もので、初出は「別冊週刊朝日」に昭和32年8月に掲載された同名の短編であった。翌年、約4倍の長さに改訂された。この改稿前の版は、出版文芸社・刊の『金田一耕助の帰還』(現在は、光文社文庫所収)で読むことができる。

※確認済みの版
初版(昭和51年3月5日発行)
3版(昭和51年7月30日発行)
8版(昭和52年6月30日発行)
13版(昭和53年7月30日発行)

(注)「角川ホラー文庫」において、『トランプ台上の首』というタイトルで横溝氏の編集ものが出たことがある。上記「貸しボート十三号」のほか、「トランプ台上の首」、エッセイ「探偵小説講座」を収めている。

2018年11月 3日 (土)

029-2 夜の黒豹

 『夜の黒豹』の新バージョンは、改作前の短編「青蜥蜴」をそのままモチーフとしている。しかもその蜥蜴は、女性の裸体(上半身)の上に乗っているという一見、極めて扇情的な作品である。ただし、それは抑えられた色調、計算され尽くした構図で書かれているので、意外にも一幅の絵画のように目に映る。中でも、背景の緑が非常に効果的だ。希少というほどでもないが、オークションなどでもあまり若いバージョンは見ない。切り替えは、昭和54年前後か。

※確認済みの版
16版(昭和55年7月30日発行)
18版(昭和56年8月30日発行)
22版(昭和59年7月30日発行)
23版(昭和60年11月10日発行)
25版(昭和62年9月30日発行)<<裏面はISBN番号や定価などの文字のみ

029-1 夜の黒豹

 『夜の黒豹』は、金田一耕助シリーズの長編。こちらも前作・前々作と同じく短編を改稿したもので、原作の「青蜥蜴」は「推理ストーリー」昭和38年3月号に掲載された短編で、それを改稿して約10倍の長さになった。この改稿前の版は、出版文芸社・刊の『金田一耕助の新冒険』(現在は、光文社文庫所収)で読むことができる。また、横溝氏が昭和37年〜同39年に上記「推理ストーリー」に書いた「百唇譜」「猟奇の始末書」「青蜥蜴」「猫館」「蝙蝠男」を集成した短編集、その名も『青蜥蜴』が双葉社から平成8年に出た。この編集物をここで取り上げるのは、この本の表紙絵が何と杉本一文氏の新作だったからである。

 一方、角川文庫版『夜の黒豹』の表紙は、作品のタイトルどおり黒帽子・黒コート・黒手袋姿の「黒豹」が、全裸の女性が描かれた真っ赤な前景に手を伸ばしている絵柄。黒と赤の対比が強烈に目に飛び込んでくる。下記版情報では、昭和52年発行の11版は、まだこの「黒豹」バージョンである。


※確認済みの版
初版(昭和51年1月10日発行)
3版(昭和51年2月20日発行)
11版(昭和52年10月30日発行)

2018年10月31日 (水)

026-2 扉の影の女

 『扉の影の女』の新バージョンは、作品の章題にもなっている「青い扉」がモチーフになっている。その扉には、真っ赤な血の涙を流している女性の顔が浮き出していて、絵画として見てもなかなか印象深い作品になっている。こちらの情報と合わせて考えると、昭和54年9月の13版で新しい表紙に切り替わったことがわかる。

※確認済みの版
13版(昭和54年9月30日発行)<<新バージョン切り替え
14版(昭和55年8月30日発行)
16版(昭和56年8月30日発行)
21版(昭和59年12月20日発行)

026-1 扉の影の女

 『扉の影の女』は、金田一耕助シリーズの長編。元々は『白と黒』の項で触れたように『金田一耕助の冒険』に収められた「ーーの中の女」というシリーズ中の一作だった。週刊誌「週刊東京」の昭和32年12月14日号、21日号、28日号に連載された「扉の中の女」が原作。それを改稿して約7倍の長さに改稿したのが本作となる。この改稿前の版は、出版文芸社・刊の『金田一耕助の帰還』(現在は、光文社文庫所収)で読むことができる。

 角川文庫版『扉の影の女』初版の表紙は、登場人物の男女の顔を霧のような白バックから浮かび上がらせたもので、微妙な肌のグラデーションが際立っている。中編『鏡が浦の殺人』を併録。

※確認済みの版
初版(昭和50年10月30日発行)
4版(昭和51年3月30日発行 )
10版(昭和52年9月30日発行)
12版(昭和53年8月30日発行)<<旧バージョン最終

2018年10月29日 (月)

025-2 魔女の暦

 杉本一文氏の手になる『魔女の暦』の第2バージョンでは、作品の中に出てくる「メジューサの首」という出し物の名前に合わせ、まさにそのメデューサの首が描かれている。題材自体は派手だが、色調を抑え気味にして上品に仕上げている。あまり数が出ないバージョンだが、下記版情報で見る限り、昭和54年2月発行の17版ではすでに新カバーになっている。こちらで見たように15版はまだ旧バージョンであったので、16版か17版で切り替えがあったと思われる。

※確認済みの版
17版(昭和54年2月20日発行)
19版(昭和55年7月30日発行)
25版(昭和59年7月30日発行)

025-1 魔女の暦

 『魔女の暦』は、金田一耕助シリーズの長編。怪文書によって浅草のレビュー小屋に誘い出された金田一の目の前で殺人が起こるが、その怪文書の差出人の名前が「魔女の暦」という趣向である。元々は、「小説倶楽部」昭和31年5月号に掲載された同名の作品で、それを改稿して約3倍の長さになった。この改稿前の版は、出版文芸社・刊の『金田一耕助の新冒険』(現在は、光文社文庫所収)で読むことができる。

 角川文庫版『魔女の暦』の表紙は、横たわる女性の身体の上に、蝙蝠のような小悪魔がちょこんと載っているという不気味な絵柄。ほとんどモノトーンで描かれているが、コントラストをつけた明暗の表現によって、女性の肌や衣服が怪しい光を放っている。

 ちなみに昭和50年8月30日発行の『魔女の暦』初版に挟み込まれた「500万部突破記念 横溝正史フェア」のミニ・リーフレットが手元にあるが、そこには『八つ墓村』から本作までの25冊がラインアップされている。第2回目の「横溝正史フェア」が始まり、角川映画の『犬神家の一族』が爆発的にヒットするのは翌51年の秋のこと。だが、ATGによる『本陣殺人事件』の映画化も手伝って、この第1回「横溝正史フェア」あたりからブームが本格的に盛り上がってきていた。『魔女の暦』と同じように手紙による犯行予告で始まる中編『火の十字架』を併録。

※確認済みの版
初版(昭和50年8月30日発行)
再版(昭和50年10月20日発行)
4版(昭和50年11月20日発行)
11版(昭和52年4月30日発行)
12版(昭和52年6月30日発行)
13版(昭和52年7月20日発行)
14版(昭和52年10月30日発行) 
15版(昭和52年12月20日発行)

2018年10月28日 (日)

024-2 夜光虫

 『夜光虫』の第2バージョンは、前景右下に時計台を置き、血のように赤いバック地の上に男性の顔と人面瘡を描いたものに変わった。男性の顔は、第1バージョンの表紙に描かれた男性と、ほぼ同じ顔つきだ。

 このバージョンの文庫は、極めて珍しい。「緑三◯四」シリーズの杉本一文カバー文庫を収集する場合、008-3『黒猫亭事件・本陣殺人事件』ほどは高騰していないとはいえ、それと並ぶくらいの難関にはなるだろう。こちらの展示を企画したときも、どうしてもこの『夜光虫』第2バージョンが手に入らず諦めかけていたが、たまたま展示会場となった越前市中央図書館の蔵書を見てみたら何とこのカバー絵の文庫があったので、びっくり。偶然にしては出来過ぎた話だが、おかげでなんとか展示に間に合った。実物がほとんど出ないので確定はできていないが、昭和53年末に出た15版が旧版なので、それ以降、56年までに表紙替えがあったことになる。

※確認済みの版
18版(昭和56年8月30日発行)
19版(昭和57年10月30日発行)

024-1 夜光虫

 このブログでは、「緑三◯四」シリーズにおける杉本一文氏の全表紙バージョンを集めるための情報を提供することを目的としている。なので、この『鬼火』以降は複数バージョンを持つタイトルを優先して掲載していくことにしたい。

 『夜光虫』は、横溝氏が戦前に書いた由利先生・三津木記者ものの長編。初版のカバーは、時計の文字盤をバックに、無表情でこちらを睨む男女の顔を大きくあしらった絵柄になっている。モノトーンの色調が、不気味さを醸し出している。

※確認済みの版
初版(昭和50年8月30日発行)
3版(昭和50年10月30日発行)
5版(昭和50年12月10日発行)
8版(昭和51年10月10日発行)
15版(昭和53年11月30日発行)

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