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2006/08/20

ルカの大型資料版1-12

 ふたたび、最近手に入れた本から。

 今回紹介するのは、今月初めに友愛書房の洋書棚で見つけた本のひとつで、「The Gospel According to St. Luke, Part one, Chapters 1-12」。これは、ルカ福音書の本文の写本証拠を「 full 」に網羅した「大型資料版」であり、S.C.E.レッグが1935年と1940年に出版した「マルコ」「マタイ」の大型版に続くものとして、当時は長らくその出版が待たれていたもの。アメリカとイギリスの協力による「The International Greek new Testament Project」の30年越しの仕事として1984年に出ており、現在のところ「ルカ」についてはこれ以上の異文資料を載せた本はないと言える。ちなみに、現在は「ヨハネ」の巻が編集中らしい。本棚の中段あたりに他の注解書シリーズなどといっしょに並んでいたのだが、背表紙の「Luke,Part one」の文字にピンときて、手に取ったら果たしてそうだった。値段も・・・今、amazon で買えるものにくらべてちょっと言えないくらい安かった。確かにカバーはかなり日に焼けているけど、この種の本につきものの書き込みもなく、ネストレ25版といい、この本といい、この日はついていたとしか言いようがないと思う。

 基本となる本文は、レッグ版がウエストコット=ホルトだったのに対し、こちらは Textus Receptus いわゆる公認本文(1873年、オックスフォード版)である。このため、ドイツの学者さんあたりからかなり批難も浴びたらしい。この本文を一節ごとに示し、これに対する異文資料( apparatus )を次の順番に示している。
1) 本文
2) INDEX LECTT: 聖書日課の指示(その節で始まる場合)
3) DEF: その節を欠く証拠
4) PATR: 教父の引用
5) 異文資料

 ネストレは、あらゆる分野の批判版・原典版の中でも、すばらしい出来の本だと思うけど、それがすべてではないのも事実。ルカの書き出しだけの1ページ目を見ても、1:2、1:4、1:7、1:8、1:10、1:11、1:12には触れられていないが、実はここにも(正文批判上、重要ではないものもあるとはいえ)多くの異読があることが、この「大型資料版」を見ることでわかる。正直なところ、ネストレ等とは記号の表示の仕方も違うし、情報量も桁違い。僕の場合は、誰も尋ねる人もいないため(泣)、ひとつの節を見るにもなかなか手こずってるのが現状だけど、いずれもう少し読み込んでから、この本の異文資料の読み方などを紹介してみようと思う。ネストレがいかに優れていても、それだけでは太刀打ちできないものがまだまだこの「本文批評」の世界にはある、それを思い起こさせる本だ。

□CLARENDON PRESS, OXFORD, 1984

※ちなみに、この本の後半「 PART TWO, Chapters 13-24」が、1987年に同じオックスフォードから出ている。これは、まだ未入手。

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 あけましておめでとうございます。しばらく更新をさぼっていたので(すみません)、 [続きを読む]

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