« 『新改訳2017』の公同書簡(その1) | トップページ | 『新改訳2017』の公同書簡(その3) »

2018/06/29

『新改訳2017』の公同書簡(その2)

 引き続き『聖書 新改訳2017』(新日本聖書刊行会)において、ネストレ28版/UBS第五版が採用した新しい読みを採用したと思われる箇所をあげる。今回は、第2ペトロから。

◯2:15 彼らは正しい道を捨ててさまよっています。不義の報酬を愛したベオルの子バラムの道に従ったのです。
2:16 しかし、バラムは自分の罪をとがめられました。ものを言うことのないろばが、人間の声でものを言い、この預言者の狂った振舞いをはばんだのです。(聖書 新改訳 c1970,1978,2003 新日本聖書刊行会)
●2:15 彼らは正しい道を捨てて、さまよっています。ベオルの子バラムの道に従ったのです。バラムは不義の報酬を愛しましたが、
2:16 自分の不法な行いをとがめられました。口のきけないろばが人間の声で話して、この預言者の正気を失ったふるまいをやめさせたのです。(聖書 新改訳2017 c2017 新日本聖書刊行会)

 ここはかなり微妙な箇所だが、ネストレ28版が「捨てて」と訳されている動詞「kataleipó」(=後に残す) を、現在分詞からアオリスト分詞に変えたため、「捨てて」「捨てることによって(岩隈直氏)」、それから「迷い出た」という意味になるという。そのことを新改訳2017は「、」を加えることで表していると想像される。ここもビザンティン系の読みで、田川氏はこちらを採用した28版を「アオリスト分詞の読みが原文に決まってるなどと断言」しているとし、「総じて二八版は安っぽく思い上がりすぎている。」と断じている。が、ここは実際の28版を見ると、「◆=ダイヤモンド記号」がついている。つまり、「ECM 第2版の本文欄に2つの同等の読みが併記された個所(28版・序文)」で、当然ながら「そこには編集者たちの判断により復元された元来の本文と同程度に有力な読みがある。(同上)」とされている。

◯2:18 彼らは、むなしい大言壮語を吐いており、誤った生き方をしていて、ようやくそれをのがれようとしている人々を肉欲と好色によって誘惑し、(聖書 新改訳 c1970,1978,2003 新日本聖書刊行会)
●2:18 彼らは、むなしいことを大げさに語り、迷いの中に生きている人々の間から現に逃げ出しつつある人たちを、肉欲と好色によって誘惑しています。(聖書 新改訳2017 c2017 新日本聖書刊行会)

 従前の「辛うじて(田川建三氏)」「やっと(岩隈直氏)」という読みと、ネストレ28版での「本当に、実際に」 「本当に」という読みの2つがある。ここもビザンティン系の読みが復権した典型だが、元々、証拠写本は分かれている。ネストレ26/27版までは、「辛うじて oligōs」が本文に採用され、メツガーの『A Textual Commentary on the Greek New Testament』でも確実性の度合いは[A]と判定されていたくらいだ(読みb:P72. 01C3. 02. 03. 044. 33. 436 その他)。実は公同書簡の「大型批評版 ECM」でも、第1版ではこちらを Initial Text に置いていたのだが、ネストレ28版/ECM第2版において、「本当に ontōs」に変更された(読みa: 01. 04. 025. 048. 5. 81. 307. 442. 1175. 1243. 1448. 1735. 1739. 1852. その他 Byz)。余談だが、田川氏の『新約聖書 訳と註 6 公同書簡/ヘブライ書』では、「大型批評版 ECM」について散々批判した後、「私は持っているが、用いることはしない。本書で「学術版」とあるのは、第1版のことである。」と「解説・後書き」で宣言されている。が、この節の解説では「学術版と二八版」が「ontōs」を採用しているように書いてある。上述のとおり、これは ECM2 (第2版)のこと。一方、その後の解説では、「いずれにせよ、ここもまた、大きな顔をしてどちらの読みが絶対に正しいなどと主張できるような状態でなく、学術版はどちらとも決められないという記号をつけている。」と書き、ここでは ECM1 の方を参照している。そのことは置くとしても、判断の難しさは田川氏の指摘どおり。ECM2 やネストレ28版で initial text を変更したことの意味は、今後、「Coherence-Based Genealogical Method = CBGM」の分析結果なども参考に考えていく必要があるだろう。

|

« 『新改訳2017』の公同書簡(その1) | トップページ | 『新改訳2017』の公同書簡(その3) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『新改訳2017』の公同書簡(その2):

« 『新改訳2017』の公同書簡(その1) | トップページ | 『新改訳2017』の公同書簡(その3) »