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2018/12/20

『聖書協会共同訳』の公同書簡(その4)

 第2ペテロに続き、第1ヨハネ書について見て行く。

●1:7 しかし、神が光の中におられるように、私たちが光の中を歩むなら、互いに交わりを持ち、御子イエスの血によってあらゆる罪から清められます。(聖書協会共同訳)

 こちらで見たように、USB5=ネストレ28版では「しかし de」の語が取れた。が、上記のように「聖書協会共同訳」は底本には従わなかった。写本証拠としては「しかし」ありの方が有力だからだろう。 訳注欄には、「「しかし」は「異」による補足」との記載がある。ちなみに「新改訳2017」は、「しかし」なし。

●3:7 子たちよ、誰にも惑わされないようにしなさい。義を行う者は、御子が正しいように正しい人です。(聖書協会共同訳)

 「子どもたちよ teknia」が、USB5=ネストレ28版で「幼い子どもたちよ paidia」という語に変わった。「聖書協会共同訳」の「子たちよ」は、「口語訳」「新共同訳」と同じで変わっていない。おそらく底本には従わなかった箇所の一つにあたるが、こちらについては訳注欄にも特に記載はない。ちなみに「新改訳2017」は、「幼な子たち、」を採用、底本を変えたことを明らかにしている。
※重要な訂正 2019年8月30日付けの「聖書協会共同訳」初版発行後に生じた変更・訂正で、1ヨハネ 3:7 の訳文が「子たちよ >> 子どもたちよ」へと変更になった。このことで、「聖書協会共同訳」の1ヨハネにおいて「paidia」の訳として使っている「子どもたちよ」と同じになった(2:14 2:18 を参照)。つまり、底本であるUSB5=ネストレ28版に従ったという判定になったということ。>>詳しくは、こちら

●5:10 神の御子を信じる者は、自分の内にこの証しを持っています。神を信じない人は、神を偽り者にしています。神が御子についてされた証しを信じないからです。(聖書協会共同訳)

 ネストレ26/27版の「彼自身に」という再帰代名詞が、USB5=ネストレ28版では同旧版に復し、「彼に」という代名詞に変更された。日本語訳では伝統的に「自分の内(うち)に」」という訳が使われてきていて、今回も大きな変更はない(「新改訳2017」も)。なので、どちらの読みを採用しているのかははっきりとはわからないが、下記「5:18」で使われた「自分」という訳が再帰代名詞の訳である可能性が高いことを考える合わせると、ここはUSB5=ネストレ28版の読みは採用しなかったか。ただし、こちらも訳注欄には異読の記載はない。

●5:18 神から生まれた人は誰も罪を犯さないことを、私たちは知っています。神から生まれた人は自分を守り、悪い者がその人に触れることはありません。(聖書協会共同訳)

 この箇所は、以前、津村春英氏が「聖書協会共同訳」の出版を控えて発表した「それでも新聖書翻訳」という小文(https://www.bible.or.jp/know/know31/h_02.html)で、本文改訂の必要性を指摘していた場所の一つである。

「3)ヨハネ一5:18(NA28で本文変更)/筆者がSOWER41号誌の聖書セミナーにおいて指摘したヨハネの手紙一5:18であるが、NA28では、「アウトン」(彼を)から、シナイ写本などを証拠とする「ヘアウトン」(自分自身を)に本文の変更がなされた。つまり、「神から生まれた者は自分自身を守り、それで悪しき者が彼に触れることはありません」というような訳になるであろう。」(津村春英氏)

 ここでは津村氏の指摘のように、従前の版の「彼を」という代名詞が、ネストレ28版では「彼自身を」という再帰代名詞に変わった。今回、出版された「聖書協会共同訳」では、「神から生まれた人は自分を守り、」と、上記「5:10」で使われている「自分」というやや微妙な訳になっている。ただし、訳注欄に「異本「神から生まれた方がその人を守ってくださり」」という注をつけていることから考えると、今回は底本に従い、再帰代名詞の読みを採用したと推測される。

 上記のように「聖書協会共同訳」の第1ヨハネでは、底本の扱いでは他書以上にばらつきがあるようだ。単なる推測だが、ここでは従来の本文批評の手法において、写本証拠が強いと判断されている方を概ね選んでいるように思われる。これはこれで一つの考え方ではあるが、訳注欄への記載が少なめであることはやはり気になる。今後、注解書などで判断基準の詳細を示してくれるとうれしいのだが。

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