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2018/12/27

『聖書協会共同訳』の公同書簡(その5)

 第1ヨハネに続き、第2ヨハネ5節。

●(1:)5 さて、婦人よ、あなたにお願いしたいことがあります。私が書くのは新しい戒めではなく、私たちが初めから持っていた戒め、つまり、互いに愛し合うということです。(聖書協会共同訳)

 ギリシャ語原文の語順の問題。「命令/新しい/私が書いている/あなたに」(USB3=ネストレ26/27版)か、「命令/私が書いている/あなたに/新しい」(ネストレ旧版、USB4=ネストレ28版)か。「新しい」という語の位置が問題になるわけだが、「聖書協会共同訳」は、「わたしが書くのは新しい掟ではなく、」という新共同訳とほぼ同じ。語順の変更が訳文に及ぼした影響は見られないようだ。

 最後は、ユダ書5節から。

●(1:) 5 あなたがたは十分承知していることですが、思い起こしてほしい。主は一度は民をエジプトの地から救い出しましたが、次に信じない者たちを滅ぼされました。(聖書協会共同訳)

 こちらにも書いたことだが、この節は非常に異読が多い箇所である。そのうち大きな論点としては、まず「一度は」という語のかかり方。「聖書協会共同訳」では後節の「救い出す」にかけて訳しているが、これは USB3=ネストレ26/27版以前の読み。一方、USB5=ネストレ28版では「一度は」という語が前節の「知っている」に係る。次に問題となるのは、後段の主語。「聖書協会共同訳」では「主」だが、これは USB3=ネストレ26/27版の読み。ネストレ28版では「イエス」に変更されている。結果、「聖書協会共同訳」は、上記2箇所とも USB5=ネストレ28版の読みを採用しなかったことになる。つまり、「あなたがたは万事心得ていますが、思い出してほしい。主は民を一度エジプトの地から救い出し、その後、信じなかった者たちを滅ぼされたのです。 」と訳した新共同訳と同じ本文を訳していることになる。ちなみに「新改訳2017年」は、ネストレ28版の読みを採用していた。

 以上、最新の邦訳聖書である『聖書協会共同訳』から、USB5=ネストレ28版において本文改訂のあった個所の取り扱いを追ってきた。その結果を簡単にまとめると以下のとおりとなる(全22箇所中、判定不明の2箇所(2ペテロ3:16、2ヨハネ5)を除く)。

・「新改訳2017」「聖書協会共同訳」がともに USB5=ネストレ28版を採用>> 箇所
※「新改訳2017」1箇所(ヤコブ1:20)は、推定。

・「新改訳2017」が USB5=ネストレ28版を採用。「聖書協会共同訳」は非採用>>8 箇所
※「聖書協会共同訳」1箇所(1ペトロ2:15)は、推定。

・「聖書協会共同訳」が USB5=ネストレ28版を採用。「新改訳2017」は非採用>>2箇所

・「新改訳2017」「聖書協会共同訳」がともに USB5=ネストレ28版を非採用>>1箇所

・訳中で異読に触れている箇所は、「新改訳2017」は11箇所。「聖書協会共同訳」は14箇所

 以上を見る限り、「新改訳2017」の方が新しい読みの採用にやや熱心だったことになるが、訳中で異読に触れている箇所は「聖書協会共同訳」の方が多い。いずれにせよ、こうした邦訳の変更が聖書本文の異読問題に触れるきっかけになるのであれば、それはそれで大いに意義のあることだろう。
(※2019年8月30日付けの「聖書協会共同訳」初版発行後に生じた変更・訂正で、1ヨハネ 3:7 の訳文が変更になった関係で、上記集計を一部変更した。>>詳しくは、こちら

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