2012/09/19

28!28!

 タイトルに書いた「28」という数字から、何を想像されるだろうか。一般の方はともかくここをわざわざ訪れる方ならば、「ネストレ新版」のことを連想する人がいても不思議ではないだろう。

 そう!待望の「Novum Testamentum Graece」ネストレの第28版が、ついに出版される。教文館・洋書部が出している最新の「BOOK NEWS」のコピーによれば「19年目の新版」ということだが、前版・第27版(1993)は前々版・第26版(1979)と基本的に同じ本文だったのだから、その第26版から数えれば実に「33年目の新版」!というべきかもしれない。何よりもネストレ本文の改訂は一世紀に数回しかない「業界のお祭り」のようなものだから、それにリアルタイムで立ち会えるというのは貴重な体験なのだ。

「改訂の重点の一つは、異文資料欄(アパレイタス)が体系的に見直され、判りやすくなりました。新たに発見されたパピルスの異文も収録されます。特に『使徒言行録』については興味深い観点が開示されるでしょう。欄外引証では初期ユダヤ教文書への参照が補足されています(「BOOK NEWS」2012 September No.1171;教文館・洋書部)」

 「異文資料欄が体系的に見直された」とのことだが、これは写植時代と違いコンピュータ製版になって、複雑な版の改正が自由にできるようになったことの恩恵もあるだろう(楽譜の改訂なども、かつては既存の旧版の原版をもとに、手で切り貼りしていた時代があった)。いや、コンピュータの活用ということでは、これにより異文評価の方法が進化したことで、本文がどれくらい変わっているかの方がずっと楽しみである。しかも今後、その改訂についての評価もあちこちで盛んになされるとなると、やはり「ネストレ」本文の改版の価値は「業界のお祭り」以上の意味があるだろう。

 ちなみに、スタンダード・バージョンのISDN番号を書いておく。9783438051400

※教文館・洋書部(03-3561-8449)でも予約を受け付けているし、地方の方は Amazon でも買える。

※※教文館の Twitter では、10月2日に入荷したとのこと。その後、筆者もこの28版を手に入れた。上にはかなりの期待を込めて書いたのだが、実は本文の変更はやはり「Catholic Letters」の部分のみであったことが判明。詳しくはこちら 。(2012.10.6の追記)

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2008/01/03

IGNTPのElectronic Edition

 あけましておめでとうございます。しばらく更新をさぼっていたので(すみません)、せめて昨2007年の本文批評関係の新刊をいくつかフォローしておきたいと思う。

 まず始めは、夏に出たIGNTP=「The International Greek new Testament Project」の新刊。IGNTPの成果については、ルカ福音書の大型批評版2分冊について、すでにこのサイトで紹介しておいた。

The Gospel According to St Luke
Edited by the American and British Committees of the International Greek New Testament Project
Part One. Chapters 1-12. Oxford University Press, 1984.
Part Two. Chapters 13-24. Oxford University Press, 1987.

 その折には、上記のPart Oneのみ筆者は持っていたのだが、その後、Amazonの中古書籍を予約注文できるシステムを使ってPart Twoを入手することができた。これについては、近いうちにこのサイトでもレビューを書きたいと思っているのだが、このプロジェクトは、このルカ編の次にヨハネ福音書にとりかかっている。実はその成果の一部=Volume Oneパピルス編が、すでに以下のタイトルとして公開されていた。

THE NEW TESTAMENT IN GREEK IV
The Gospel According to St John
Edited by the American and British Committees of the International Greek New Testament Project
Volume One. The Papyri. Edited by W.J. Elliott and D.C. Parker.
(New Testament Tools and Studies 20). Leiden, E.J. Brill, 1995.

 今回、出版されたのは、その第二部Volume Twoにあたる大文字写本編である。

Volume Two: The Majuscules.
Edited by U.B. Schmid in association with W.J. Elliott and D.C. Parker.
(New Testament Tools, Studies and Documents 37). Leiden, E.J. Brill, 2007.

 ちなみに、パピルス、特に4世紀以前の古いものに限っても、ヨハネについては福音書全体のかなりの部分が発見されており、これは他の新約文書と比べても注目すべき点である。これに加え、今回、大文字写本の異読情報が加わったことで、この福音書の本文状況がかなり明らかになったと言える。

 これだけでもかなりの朗報だが、驚くべきことに!この大文字写本編Volume Two: The Majuscules. には、ONLINE PUBLICATIONSまで用意されている。つまり、ネット上でヨハネの大文字写本の異読が閲覧できるのである。

http://itsee.bham.ac.uk/iohannes/majuscule/

 このサイト=「THE NEW TESTAMENT IN GREEK: THE GOSPEL ACCORDING TO ST. JOHN/ELECTRONIC EDITION OF VOLUME TWO: THE MAJUSCULES」に行き、左のガイド・フレームの「Electronic Edition」という文字をクリックすると、右フレームに新しいページが開かれる。その一番下にオンライン・バージョンの入り口がある(ちょっと見では見落としがちな場所なので、あわてないで見つけてほしい)。以前に紹介した「Digital Nestle-Aland」と似たようなインターフェイスで、コツさえつかめば我々一般愛好家にもすぐに利用できると思う。興味のある方は、ぜひ一度ご覧になっていただきたい。

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2006/10/19

『A Concice Coptic-English Lexicon』

 小さな GoodNews をひとつ。このサイトの hp 版

http://homepage3.nifty.com/gospels/

で紹介している「トマス福音書」の原語=コプト語の辞書『 A Concise Coptic-English Lexicon 』がペーパーバック版で出ていることに最近気づき、Amazon で注文してみた。

 このレキシコンは Ricard Smith さん編のまさにコンサイスな辞書で、コプト語の意味(もちろん訳語は英語だけど・・・)を手早く調べるには最適な選択と言える。値段も2700円ちょっとだから、かつて僕が手に入れたハードカバー版の半額以下である。コプト語の辞書としては、このレキシコンの序文にも触れられているように、W. E. Crum さんによる大著、『 Coptic Dictionary 』(Oxford U.P. / Sandpiper) が有名だが(今でもリプリント版が手に入る)、こちらは確かに「サイズとプライスの両面で、コンビニエントじゃない」。かばんにもすっと入れられるこの辞書。「トマス福音書」やナグ・ハマディ文書に興味のある方は、ぜひこの機会に手に入れてみてはいかがだろうか。

□A Concise Coptic-English Lexicon, Second Edition; Society of Biblical Literature Resources for Biblical Study 35, Reprinted in paperback, 2000

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2006/09/30

Digital Nestle-Aland Prototype

 今日、仕事から家に帰ってきたら、銀座の教文館から『国際聖書フォーラム2006講義録』が届いていた。これは、夏前に上京した折に、予約しておいたもの。ジェイムズ・M・ロビンソンや、ジョン・ドミニク・クロッサンといった欧米の大物学者に加え、大貫隆氏や月本昭男氏など我が国の気鋭の学者の講義が26本も掲載されていて3500円だから、これはかなりお得では?。さっそくぱらぱらとあちこちを眺めていたら、ミュンスター大学の新約聖書本文研究所のクラウス・ヴァハテル氏による「ネストレ=アーラント」に関する最新の報告が目についた。

 ここに示された情報のうち、近い将来に出されるであろうネストレ28版!の近況も、もちろん興味深いのだが、さらにデジタル版のネストレが、ミュンスターの研究所のサイトでプロトタイプとして提供され、かなりのレベルまでできあがっているらしい。

http://nttranscripts.uni-muenster.de/

 さっそく見てきました。第一感として、「これは、すごい!」。本文の単語ごとに異読情報がビジュアルとして表示される機能はきわめて便利で、まさにデジタル版の強みだ。また僕が一番気に入ったのは、「写本本文の転写」機能。つまりシナイ写本なら 01、アレキサンドリア写本なら 02 といった、写本番号をクリックすると、その写本に示された本文が画面に表示されるという仕組みである。しかも、先の発言で触れたノミナ・サクラ nomina sacra の縮約形もそのまま見られるので、この点では明らかに紙バージョンを超えている。またシナイ写本やバチカン写本のように、後世の校訂者による加筆もちゃんと表記しされている。まだまだ工事中のところもあるようだが、このままでもかなり使えるのではないだろうか。

 At the same time, the Nestle-Aland (28th edition) is being digitised and prepared for publication on CD-ROM.  It is planned to link the text and apparatus of the digitised Nestle-Aland on the CD to the additional transcripts and their apparatus published on the Internet.

とサイトにもクレジットされているので、この新時代のデジタル=ネストレの誕生に期待したい。(でも、こういう情報って、フォーラムの報告みたいな形でなく、日本の聖書関係者の本や雑誌記事等になぜ普通に紹介されないのかなあ・・・)

□『国際聖書フォーラム2006講義録』問合先 財団法人 日本聖書協会 頒布部 TEL.03-3567-1987  FAX.03-3567-4451

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