2006/08/15

Student version of "Q"

 追加情報ですが・・・。

 『The Critical Edition of Q (Fortress Press, 2000)』の student version として、ギリシア語の原文テキストと英語訳のみを掲載した版が出ているようだ。

□The Sayings Gospel Q in Greek and English with Parallels from the Gospels of Mark and Thomas, General Editors: James M. Robinson, Paul Hoffmann, John S. Kloppenborg
Managing Editor: Milton C. Moreland, Fortress Pr.; Bilingual版, 2002

 さらに、英語訳バージョンもある。

□The Sayings of Jesus: The Sayings Gospel Q in English (Facets), James M. Robinson, Fortress Pr.; 2001

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Q資料の Critical Edition

 先に国際Qプロジェクトを紹介したが、その成果としては「The Critical Edition of Q」が出ている。この本は、簡単にいうと、「Documenta Q」シリーズの最終成果部分=「復元されたQ資料」だけを取り出し、1冊にまとめたもの。Q資料といえば、前世紀から、いや19世紀ですから前々世紀(ですねえ)から、その存在が想定されてきた文書であって、その批判版テキストが出現したというのは、やはりQの研究史が「major turning points」(これはエディターたち自身の表現)を迎えたといわざるを得ない。

 批判版テキストの名に恥じず、本文の提示方法は大変精密で、Q資料と他のテキストとの相互関連が一目でわかるように工夫されている。つまり本文は、次の8つのコラム

1) マルコのマタイとの並行箇所
2) マタイの二重記事
3) Qに由来するマタイのテキスト
4) Qの批判版本文
5) Qに由来するルカのテキスト
6) ルカの二重記事
7) マルコのルカとの並行箇所
8) トマスからの並行箇所

からなっていて、この本全体が1冊まるごとイエスの語録資料の対観表として利用できる。さらに巻末には、精密なコンコーダンスまで完備している(約600ページ、本の厚さは、なんと7cmもある!)。ちなみにこの本、「Hermeneia: A Critical and Historical Commentary on the Bible」というシリーズの、「Supplements」にあたる。

□「The Critical Edition of Q: Synopsis including the Gospels of Matthew and Luke, mark and Thomas with English, German, and French Translations of Q and Thomas」
(James M. Robinson, Paul Hoffmann, John S. Kloppenborg, Fortress Press, 2000)

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国際Qプロジェクト

 Q資料の単一のギリシャ語テキストを復元する「国際Qプロジェクト」については、このサイトの hp 版や Nifty の FBIBLE フォーラムでも幾度か紹介してきた(日本では、なぜかこのプロジェクトをフォローされている方が少ないようで、ほとんど孤立無援状態なんですが・・・)。

 マックの「The Lost Gospel」等に一部紹介されていたこのプロジェクトの目的は、共観福音書の最重要資料のひとつと目されているQ資料の単一のギリシャ語テキストを復元すること。ご存じのように、Qは主にルカとマタイという両福音書から抽出されたものだから、ルカ・マタイの両者のあいだに語句的な食い違いがある場合、どちらがQの原形に近いかが問題となってくる。これまでにも何人かの学者さんが、Qの復元に取り組んでいるし、マックも「The Lost Gospel」のなかで自身の版(これは英訳版ですが)を提示しているのだが、この際にもQプロジェクトの研究成果を参考にしたことが報告されている。

 このQプロジェクト、委員会を作り何人かの専門の学者さんが集まって批判版の本文をつくるわけで、やり方としてはネストレとかUBSとかと同じなのだが、もともとQ自体の写本が存在するわけではないので、その妥当性はネストレとかとくらべるとどうしても低くなるんじゃないかな、なんて僕は思っていたが、実際の本を手にしてみるとそれは杞憂だということがわかる。例えば、「 Documenta Q / Q4:1-13,16. The Temptations of Jesus-Nazara 」の巻では、Qのうちわずか14節(14章じゃないよ)を、480ページ余り使って説明してるのだから、その議論の精妙さがわかろうというもの。

 まず最初に、ほぼ1節ごとに、ルカ、マタイ(時にマルコ)と再構成されたQテキストを並べて示し、各ギリシャ語本文の差異を示します。その際、各差異を示した箇所について番号がふられ、ほぼ逐語的に、ルカがオリジナルか?、マタイがオリジナルか?、あるいは、それがQに含まれるか?、といった議論点があわせて提示されるという具合。以下、そのひとつひとつの問題点について検討していくわけだが、このとき、ヴァイスからハルナック、タイセン、ブラウン、マックなど過去2世紀にわたるQや共観福音書の170人以上の研究者の成果にあたり、それらを、「Qとして採用」、「非採用」、「その他」、「決定せず」、といった判断ごとに分類して言及箇所を引用する(それも必要ならば1ページ以上の量で)という徹底ぶりだから驚くほかない。この方法自体は、J.クロッペンボルグの「Q Parallels」(PolebridgePress,1988)を基本的に踏襲しているわけだが、引用文献の数、量はまさに桁違い。それに、引用文献のなかには研究者といえども簡単に参照できない研究書もあるでしょうし、この本が「Database」といわれるゆえんも、まさにここにあるのだろう。

 この引用セクションのあとに、Qプロジェクトの複数メンバーによる「Evaluations」=「評価」が加えられている。ここには{A}~{D}までの4段階の確度があわせて表示され、復元されたQ本文について、Qプロジェクト内での意見の一致具合が一目でわかるようになっている点もなかなか優れている。もちろんQプロジェクトの復元結果に賛同できない学者さんもいると思うけど、その場合でも、今後Qについて言及するときには、このプロジェクトの成果を基礎に置くことになるのは間違いない。

 この本全体にわたって、以上見てきたような手続きがえんえんとくり返され、それも「Kai」を入れる入れないとか、マタイにはある冠詞がルカにはない、どっちをとるか、とかいった非常に細かい議論がほとんどだから、まあ新約研究を職業としていない僕のような素人さんにはもったいないような本だといえるけど(第一、70~80あるとされるQのセクションのうち、1巻1万円強の本でやっと1~2つが復元されているに過ぎない)、一応、ご紹介させていただきます。





追記:「Documenta Q」シリーズの既刊は、出版元のサイトによれば下記の7冊(出版元は、ベルギーの 、Peeters ) ※1冊は後記

Q 7: 1-10 The Centurion's Faith in Jesus' Word
 Johnson S.R.
The Critical Edition of Q. A Synopsis including the Gospels of Matthew and Luke, Mark and Thomas with English, German and French Translations of Q and Thomas
 Robinson J.M. , Hoffmann P. , Kloppenborg J.S.
Q 12:8-12. Confessing or Denying - Speaking against the Holy Spirit - Hearings before Synagogues - Fleeing among the Towns of Israel
 Brauner U. , Hieke T. , Hoffmann P. , Heil C. , Amon J.E. , Boring M.E. , Asgeirsson J.Ma.
Q 22:28, 30. You Will Judge the Twelve Tribes of Israel
 Hoffmann P. , Brandenburger S.H. , Brauner U. , Hieke T.
Q 11: 2b-4. The Lord’s Prayer.
 Anderson S.D. , Carruth S. , Garsky A.
Q 6: 20-21. The Beatitudes for the Poor, Hungry, and Mourning
 Hieke T.
Q 12:49-59. Children against Parents - Judging the Time - Settling out of Court
 Carruth S. , Garsky A. , Heil C. , Hieke T. , Amon J.E.
Q 4: 1-13, 16. The Temptations of Jesus - Nazara
 Heil C. , Carruth S. , Robinson J.M.

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