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2006年12月15日 (金)

まぼろしのモーツァルト交響曲第3番

 わけあって、最近、モーツァルトの幼少年時代のことを調べている・・・

 モーツァルトは、父親に連れられて7歳から10歳にかけて、有名な「西方への大旅行」にでかけた。ロンドンでは大バッハの息子であるヨハン・クリスティアン・バッハやカール・フリードリッヒ・アーベルと出会い、その影響を受けて初めて交響曲の作曲(第1番・変ホ長調)を手がけている。この1番から最後の第41番・ハ長調「ジュピター」にいたる一連番号は、19世紀に出版された「旧モーツァルト全集」でつけられたもの。その後の研究で、第2番変ロ長調は、父親のレオポルト・モーツァルトの作らしく、また第3番変ホ長調は、アーベルの作をモーツァルトが編曲・写譜したものとわかっている。ちなみに第37番として知られていた曲も、ミヒャエル・ハイドン作のト長調の交響曲で、モーツァルトの手になるのは、第1楽章の前につけられた20小節の「序奏」だけ、というのが現代のモーツァルト研究の結論である。

 では逆に、「モーツァルト作とされた交響曲第3番は、いったいどんな曲だろうか?」と思った経験はないだろうか? そういうとき、モーツァルト交響曲全集をひっぱりだしてみても、現在ではモーツァルト作でないとされた上記3曲は収録されていないのが標準である(現代のCD編集は、バッハでもモーツァルトでもどちらかと言えば作品の真正性にかなり厳しく、偽作を収録しないのが通例となっている)。それではと、少し古めの録音はどうかと思い、LP時代から有名なカール・ベーム+BPOの交響曲全集(DG)を調べてみたのだが、これにも全47曲が収められているけれどやはり未収録。結局、その昔、ウェストミンスターから出ていた史上初のモーツァルト交響曲全集として名高いエイリッヒ・ラインスドルフ+RPO盤(最近、グラモフォンから復刻された)を買うしか選択肢はないように思われた。

 しかし、こういうときこそ我らがナクソスの出番である。ナクソスのモーツァルト交響曲シリーズは、前半がニコラス・ウォード指揮ノーザン室内管弦楽団、後半がバリー・ワーズワース指揮カペラ・イストロポリターナという分担になっている。そしてこのウォード盤の中に、第3番変ホ長調K.18を含む上記3曲が収録されているという趣向になっているのである。で、早速、アーベル作の編曲という第3番を聴いてみた。

 第1楽章は、弦楽によるスピーディーなテーマに始まり、木管アンサンブルによる第2主題とあざやかな対比をなす。作品冒頭をファンファーレよろしく元気に始め(なにしろ交響曲は今と違ってコンサートの最初の曲=序曲だったのだ)、第1楽章の展開部と第2楽章を短調に傾けしっとり聴かせるパターンは、モーツァルトの交響曲第1番変ホ長調や第5番変ロ長調と同じ趣向だ。これは、ある意味で当時のシンフォニーの常套手段なのだろう。軽快な終楽章も手慣れた手法で書かれており、なかなか魅力的だ。両端楽章では、ファゴットが音階を上がったり下がったりする伴奏音形を奏でるあたり、かなりユーモラスな印象もある。

 ちなみにこの作品の元ネタは、アーベルの作品7の6の同調の交響曲であり(モーツァルトは、オーボエ・パートをクラリネットに変えている)、作品7の交響曲集の方もなんとナクソス・ミュージック・ライブラリーで聴くことができる! シャンドス・レーベルのカンティレーナという団体の演奏で、指揮はアーノルド・シェパード。チェンバロも加わったさわやかな演奏であり、アーベルの交響曲をまとめて聴けるほとんど唯一のCDとして貴重なものと言える。

□モーツァルト Naxos 8.550871; アーベル Chandos CHAN8648

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