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2014年2月 9日 (日)

ハイドン・アラカルト

 クリストファー・ホグウッド/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの「ハイドン交響曲全集」(L'OISEAU-LYRE)は、いわゆる「シンフォニー」の概念にある曲を包括的にまとめた「モーツァルト交響曲全集」の第2弾として、多いに注目された企画であった。が、残念ながら、途中、第75番まで収録した第10巻で中断してしまった。奏者や使用楽器まで記載されている上、彼らのていねいな演奏は資料的価値も高い。またなんといってもランドン以降の研究を踏まえたジェイムズ・ウェブスターの新しい解説がすばらしく、それを読むだけでも価値がある(日本版では、第4、5巻などわざわざ日本の学者さんのものに置き換えられた巻があるので注意が必要。輸入版の中古が安く買えるのでそちらで読むことができるし、下の記事も参照)。曲数としては上記のほかに第107、108番、そして別に1枚もので出されていた第94、96、100、104番があり、計81曲。ただし、この全集企画には中断した第75番のあとにもう2曲、第76、77番が録音されていて、これはなんと英国の雑誌「BBC music magazin」の付録で出されていた(2005)。一昨年あたりになってこのことを知った私は、しばらく中古CDショップなどでこの盤を探していたが、結局見つけられないでいた。2012年の年末あたりに、この未完成全集の既存の録音をまとめたボックスセット(32CD)がUniversal Italyから出され、しばらくベストセラーにもなっていたが、追加の2曲はこれにもなぜか未収録。ところが先月末になって、偶然、アメリカの、というか本家のアマゾン=Amazon.comに、このCD(雑誌はついていないが新品)が出品されていることがわかり、早速注文したところ、わずか!1週間で届いたので、今、聴いているところ。曲順は第77番変ロ長調からになっていて、高いアルトで吹かれるホルンの音色も美しく、雪景色の朝にふさわしい。細心の注意でもって奏される第2主題のなつかしさは、ホグウッドならではである。ゆったり歌った第2楽章もこれ以上はないくらい美しい。この時代の曲は、いわゆる疾風怒濤期のあと、そして「パリ交響曲集」の前という狭間の時期で、この曲など全集以外の録音は極めて少ない。本日現在、まだ出品があるようなので、興味のある方はぜひこの機会にどうぞ。

 追加で、ハイドン情報を少し。ハイドン106交響曲視聴記録(最初期編)を書いているときから時折、利用していたのだが、ネット上に2009年のハイドン・イヤーを記念して彼の交響曲情報を集めた「HAYDN100&7」というサイトがある。

http://www.haydn107.com/index2.html

 このサイトのすばらしい点のひとつは、ドラティ、フイッシャー、ホグウッドという3大全集(ホグウッドは上記のように未完成だが)の演奏が、ストリーミングで聴けるということ。むろん、曲の一部だけ視聴というわけではなく、全曲が聴ける(414 movements.あるそうだ)。最初、これを見つけたとき、非常に便利だがもしかしていわゆる海賊サイトなのかと思ったくらいで、そのためここでも紹介するのをためらっていた。音源だけでなく各曲に、楽章ごとの曲頭譜例、上記ウェブスターの曲目解説等もついているという本格的な内容。Haydn FestivalのArtistic Director、Dr. Walter Reicher氏の序文によれば、「For this we extend our thanks to Universal Music and Brilliant Classic. 」と書かれているので、たぶん著作権者の承認を得ていると思われるが、いつまで存在するのかわからないのでここでご紹介しておくことにする。

 もうひとつおまけで。私がいつもお世話になっている輸入楽譜店アカデミア・ミュージックのPR誌「アカデミア・ニュース」については、以前、その記事の充実ぶり、というか書き手の社員さんの博識ぶりについて紹介したことがある。2014年1・2月合併号に、ハイドンの交響曲第46番(ロ長調の曲)の新ハイドン全集版の演奏譜がベーレンライター社から出たという記事があり、その記述がまた興味深い(同ニュース341号、PDF版)。

「「告別」の嬰ヘ短調も珍しいのですが、こちらはロ長調という交響曲では例のない調性です。ホルンの替え管にH管は存在しないはずなので、C管で抜き差し管を限界まで伸ばしたか、替え管を特注した可能性があります。この特異な響きの交響曲をエステルハージ家の人々はどのように聴いたのか気になるところですが、その後、奇抜な調性の交響曲は書かれていないので、この悪戯は不首尾に終わったのか もしれません。」

 ホグウッド全集の同曲の解説にも、1772年にハイドンの楽団が「2本のクルック(半音替え管)」(ウェブスターの原文では「'half-step slides'」)を同時購入したことが書かれている。おかげで、新たに調べてみたいことができた。

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コメント

掲載のハイドン 「HAYDN100&7」を一部見てみました。今まで交響曲の主題の一覧を自分なりに、整理してみるのに、苦労をしていました。このサイトでは、各楽章ごとに、主題が記載されています。序奏のある楽章については、序奏とその後の主部の第1主題もあわせて、掲載されていました。膨大な交響曲の主題を、自分なりに、整理して、記憶をするにも、苦労をしています。(一度、聴いただけで、どの交響曲のどの楽章の主題なのかは、とても、現段階では覚えられませんが)このサイトは、その点で、交響曲を整理する上で役立ちそうです。

投稿: tenkichi995 | 2014年2月23日 (日) 17時05分

tenkichi995 様、少しお久しぶりです。
>膨大な交響曲の主題を、自分なりに、整理して、記憶をするにも・・・
tenkichi995 様のハイドン交響曲にかける熱意にはいつも心から感服させられております。私の場合、すべての楽章を憶えるのは到底無理としても、先人に倣って曲にニックネームをつけたらどうかと考えたことがありました。例えば、
第1番「ロケットスタート」
第2番「2声のアンダンテ」
第3番「二重フーガ」
とかいう感じです(笑)
あまり知られていない初期交響曲等には、有効ではないでしょうか?

投稿: cherubino | 2014年2月24日 (月) 13時08分

私の方も、一時期、ニックネームを中心に、覚えようと考えてみました。しかし無理やり、こじつけて覚えるのも限度がありますし、全ての楽章の主題を記憶しているわけでもありません。しかしながら、少なくとも、交響曲の調性(とっても、第1楽章を中心としたものが中心ですが)は、記憶の整理として行っています。
 作曲された当時、作曲順番などは、ハイドン自身、細かいところは、考えていなかったと思います。また、演奏する当人たちの楽団や、それを聴く、宮廷関係者も、交響曲○○番といったものは、関与しなかったでしょう。しかしながら、ハイドン自身、作曲目録を作っていますし、その調性から、交響曲は整理していたと思います。私もそれに習って、第○○番といったものよりも、初期や中期の頃の○○調の曲といった感じで覚えるようにしています。

投稿: tenkichi995 | 2014年2月24日 (月) 22時19分

>私もそれに習って、第○○番といったものよりも、初期や中期の頃の○○調の曲といった感じで覚えるようにしています。

いつもコメントありがとうございます。
以前、こちらでもご紹介した神崎正英氏の The Web KANZAKI。http://www.kanzaki.com に、ハイドンの交響曲を調性別に分類した表があり、便利なので時折、参照させていただいています。またなにかハイドン情報がありましたら、ぜひご教授ください。

投稿: cherubino | 2014年3月 4日 (火) 12時49分

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