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2016年5月26日 (木)

ウラニア盤のないウラニア盤紹介(その2)

 先日、「ウラニア」盤と同じくフルトヴェングラーの1944年12月ウィーンでの「英雄」の演奏を収めたユニコーン盤を紹介した。この盤と同時期に、米ヴォックス社が Turnabout というレーベル名で、やはり同じ1944年の演奏を出している。「TV 4343 (VM 3293)」という番号で、ユニコーン社からのライセンス発売※1。同じ番号で複数のバージョンがあることが知られていて、ジャケットやレーベル面のクレジットが本来の「ウィーン・フィル」でなく、「ベルリン・フィル」になっている盤もある(僕の所有盤もそちら)。

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 「RECORD SOUND」というクラシックレコード専門店のサイトに当盤の解説があり、それによれば「初回プレスはオーケストラ名をウィーン・フィルと正しく記していて、おそらく米国国内向けだと推測できる。輸出用のものはベルリン・フィルと書き換えられて大量に作られた。よって米国以外では全てベルリン・フィル表記のもののみ目に触れたので、最初からベルリン・フィル表記で作られたかと思われた。後年になって同番号でウィーン・フィルと正しく直したものも作られたがレーベルは小さくなっている。よってTV4343には3種類のものがある。」とある。確かに、レーベル面の上部に「UNIVERSAL USE / STEREO can also be played MONO」と記されているものもあり、輸出用とも考えられる。が、こちらのサイトの写真のように、ジャケットがウィーン・フィルで、レーベルが「UNIVERSAL USE」付きのベルリン・フィル、という盤もあるので、やはり詳細は不明というほかない。

 ちなみにこのターンナバウト盤も、ピッチ未修整。しかし、こちらの盤の第2楽章は、A面・B面に分かれてカッティングされている。なので、ユニコーン盤とはLP盤のカッティング・マスターは別、ということになる(第2楽章のA面の収録時間は「10:37」=第157小節終わりまで、B面は「6:27」)。音質は、オリジナルのユニコーン盤よりむしろ雄弁な感じで、冒頭の和音から低音が効いている。録音会場となったウィーン・ムジークフェラインザールの広がりをも感じさせる(もしかして残響成分を足した?)。わずかにハム音が聴こえる箇所があるが、臨場感は相当なものだ。僕個人は、ユニコーン盤の繊細さを評価しているが、フルトヴェングラーらしらという点から考えれば、ターンナバウト盤を好む人も多いと思われる。
(2016/6/13の付記 上記「ジャケットがウィーン・フィルで、レーベルが「UNIVERSAL USE」付きのベルリン・フィル」盤を手に入れた>>写真右。こちらは何とピッチ修正済み! 写真では見にくいかもしれないが、ジャケットの上端を盤の無音部分の端に合わせて置いてみた。左に置いた「ジャケットがベルリン・フィルで、レーベルもベルリン・フィル」という盤と比べると、演奏時間が延びているので無音部分が狭くなっていることがわかる。またこのウィーン・フィル・ジャケットは、裏面がモノクロになっている。)

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 Turnabout レーベルからは、1974年にも「THS-65020」という番号で、同じ演奏が再発されている。再発盤と侮ることなかれ。こちらはなんとピッチ修正済みタイプである。当然ながら演奏時間も長くなっている。また、第2楽章は「TV 4343」と同じ箇所で、A面・B面とに分割されている。僕の所有しているLP盤は下記のとおり「ベルリン」盤だが、こちらにもウィーン・フィル表記に直した盤があるようだ(>>例えば、こちら)。

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 また、仏ヴォックスからも、1944年の演奏は出ていた(「VOX 35070 」)。「VOX MUSICALIS」というシリーズの70番で、なんとこちらもベルリン・フィル表記(ジャケット、レーベルとも)。

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 発売は、レーベル面に記されたクレジットによれば1975年。第1、2楽章を一面に収めているのでピッチ未修整かとも思ったが、さすがにすでにピッチは修正されている(第1楽章のタイムは、約15:25)。しかし興味深いことに、この仏ヴォックス盤の第2楽章には、ちょうどターンナバウト盤にあったA面・B面の分割部分にあたる場所に短い切れ目がある。ということは、レコードの元になったマスターテープは、ターンナバウト盤と同じもの使ったということになるわけである※2。

 実は近年出たCDの中にも、同じヴォックス音源を使っていると言われているものがある。例えば、PREISER のCD(90251)や、BAYER DA CAPO のCD(BR 200 002 CD)で、これらはともに「迫力・臨場感がある」とネット上でも評判のいい盤だ。が、第2楽章にはやはりターンナバウト盤の面変わりと同じ箇所、ピッチ修正後のCDで言うと「10:55」あたりに無音部分(録音されていない部分)が認められる。なので、これらは「VOXのLP製作用テープが音源」と言われている。今回は3種のヴォックス系列盤を聴いてみたが、LPのカッティングの仕方ひとつからも、いろいろなことがわかるものであり、実に興味深い。

※1 Turnabout は、上記とは別に交響曲「第5番」「第9番」とともに3枚組とした盤も出している(TV 4352-54)。
※2 ちなみに、仏ヴォックス盤と同じく第2楽章を一面に詰め込んだユニコーン盤には、切れ目は見あたらない。
※3 (参考追記)独インターコード社からも、1977年にヴォックスからのライセンス盤が出ていた(INT 125.801)。1980年にも同社から再発盤が出ている(INT 120.921、SAPHIRというシリーズ)。

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