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2016年5月29日 (日)

ウラニア盤のないウラニア盤紹介(その3)

 この項の(その1)で、学生時代に友人のN君宅で、初めて「ウラニア」盤なるものを聴いたという思い出話を書いた。では、それはどの盤だったろう。

 日本国内で出た最初の「ウラニア」盤は、日本コロンビアが1970年7月に発売したDXM シリーズだった。「栄光のフルトヴェングラー」シリーズ発売第一弾がそれで、「DXM-101-UC」という番号で発売された。番号末尾の「UC」という記号でわかるように、ユニコーン原盤である(これについてもこちらのサイトに掲載されたちらしが参考になる)。

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 今考えると、世界的に見てもかなり早い時期だ。当然ながらピッチは未修整※1。第1、2楽章は、A面に詰め込まれたタイプながら、オリジナルのユニコーン盤とは少し音質のタイプが違うようで、最初の和音から非常に中身のつまった重々しい響きを聴くことができる※2。当時の『レコード芸術』誌(昭和45年8月号)でも推薦盤になっており、「音にも艶があり,録音条件が悪かったであろう大戦中の録音とは思えないほどである。」(『「レコード芸術」コメント付き推薦盤全記録(下巻)』、昭和57年7月号付録)とある。近年、乱発気味の気配さえあるウラニア盤の「板起こしCD」では荒れた音場のものが多く、それに比べるとずっと音楽的である。中古で1000円以下で買えるものが多く、いい買い物になると思う。

 このあと、日本フォノグラムという会社が、「フォンタナFontana」というレーベル名でフルトヴェングラーのライヴ録音を数枚出している(「フルトヴェングラー・ライヴ・レコーディング・シリーズ」)。「英雄」の巻は1973年に出た「FCM-50(M)」で、その番号の下に「(TV4343)」とあることから、こちらはTurnabout 原盤であることがわかる※2。

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 この盤はやや地味目な音質。というのも、こちらはピッチが修正されていて、第1楽章のタイミングは「15'31」と長めになっている(上記コロンビア盤は「14'53」)。第2楽章は、A面終わりとB面始めとに分割されているタイプとなっており、分割箇所は(その2)で触れたターンナバウト盤と同じである。当時、フルトヴェングラーの盤が廉価盤(1000円)で買えるというのは珍しかったろう。宇野功芳氏によるライナーノーツでは、1952年盤との詳細な比較がなされている。強奏部分で少し音が荒れる箇所もあるが、冒頭の和音もちゃんと<変ホ長調>で鳴る最初期のLP、という意味でもちょっと持っていたい盤である。翌1974年にも、ジャケットを一新し、「PC-1(M)」という規格でも出た。

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 こちらはなぜか「フィリップス」レーベル。その後、日本フォノグラムは、再びフォンタナ・レーベルの「GLORIA PILOT」というシリーズ名で「PL1012」(1976年、限定盤1000円)、「PL1115」(1979年、1300円)という再発盤を相次いで出している。ちなみにこれら4種の日本フォノグラム盤は、レコード番号は違うが、原盤番号はいずれもA面「TYC-3438」、B面「TYC-3439」となっており、同じマスターテープから作られている。

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 僕自身この「GLORIA PILOT」シリーズの「第九」の巻を買って、今でも所有している(「PL-1104」)。1942年の「ベルリンの第九」を初めて聴いたのはまさにこの盤であり、そのときの感動は今でも忘れ得ない。(その1)で触れた僕の友人N君が持っていた「バイロイトの第九」とよく聴き比べたものである。となると、やはり当時、学生だった我々が聴き得たのは、これらフォンタナ盤のいずれかであったような気がする。特に、「GLORIA PILOT」シリーズのいずれかであった可能性はかなり高い。というのも上記N君の家にも、同じ「フルトヴェングラー「二つの運命」」という盤(「PL-1020」)があったことは、はっきり憶えているからである。

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 そうでなければ、EMIがユニコーンを買収したのち、東芝EMIから出された「WF7000シリーズ」の中の一枚、「WF70002」だった可能性もあるが、こちらは定価2500円というレギュラー盤。学生がおこずかいで買える範囲では、やはり廉価盤のフォンタナ盤だったろう。ちなみに以下の写真は、その再発盤である「WF60043」で、1981年1月に出されている。こちらは定価2千円。

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 『レコード芸術』誌別冊『レコード・イヤーブック'82』によれば、この「WF60043」について、「旧WF70002(75年5月)の再発売」とあるので、1975年の5月というフォンタナの「GLORIA PILOT」シリーズより早い時期に、東芝EMIが「ウラニア」盤を出していたのも事実ではあるが。ちなみに東芝から出た以上のLPは、いずれもピッチが高いバージョンであり、ユニコーン盤と同じくA面に第2楽章全体を収めている。(その1)で僕が買ったという初出CD(CE28-5746)にこう注記がある。
「 このCDは、LPで発売された際、オリジナル・テープ通り、半音高い状態で発売されていました。
 今回、このCDは正常なピッチにあらためて発売致しましたので、LPとCDとは時間差がございます。ご了承下さい。」

※1 ただネット上では、「ピッチ修正済み」との情報も複数ある。念のため2枚買って確認したがともにピッチは高かった。レーベルに印刷されたフルトヴェングラーの顔写真が反対向きになっているバージョンがあるようで、万が一、「ピッチ修正済み」という盤がある可能性も否定できないが。
※2 こちらのサイトでの報告によれば、太田憲志氏の復刻レーベルOTAKEN RECORDS からかつて出されていた「OTAKEN TKW-201」は、「日本コロムビアのLP(DXM-101-UC)からの復刻」とされる。
※3 同時発売のベートーヴェン交響曲第8番の盤(1953年のベルリン・フィルの演奏、「FCM-53(M)」が、クリュイタンスの演奏ではないか、ということでも話題になったシリーズでもある。

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