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2016年9月11日 (日)

2016年のタケミツ

 本日は、毎年地元で行われている音楽祭の最終日。マチネーで武満徹の「没後20周年記念」と題されたコンサートが行われたので、顔を出してきた。曲目と演奏者は以下のとおり。

1)「エア」 増本竜士(Fl.)
2)「海へ」 増本竜士(Fl.)、マルコ・デル・グレコ(Gt.)
3)「フォリオス」 マルコ・デル・グレコ(Gt.)
4)「フォー・アウェイ」 中川賢一(Pf.)
5)「雨の呪文」 上野由恵(Fl.)、上田希(Cl.)、松村多嘉代(Harp)、中川賢一(Pf.)、葛西友子(Perc.)

 冒頭は武満さんの遺作となったフルート独奏による「エア」。フルート担当の増本氏は、<代役>での登場とのアナウンスがあった。急遽、呼ばれたのかもしれないが実にしっかりとした演奏ぶりであり、ただでさえ緊張するトップバッター、しかもソロという重役を十二分に果たしていた。楽譜に細かく指定されたフラッター奏法等の特殊技法や、緩急・強弱の差はさほど強調されないのだが、その分、曲の簡素かつ精妙な曲の味わいが良く出ていた。特にヴィブラートをかけない清潔な吹き方は、好感が持てる。ギターのマルコ・デル・グレコが加わってもう一曲、「海へ」。音楽的にもつながりのある曲で、この曲順はなかなかすばらしい。全体に非常にすっきりとした造形で、リタルダンドやフェルマータの指定のあるところでもあまり粘らない(第1曲「夜」の最後、楽譜に「Very long」「dying away naturally」とある部分は、いかにもそっけなさすぎると感じないでもなかったが)。リズミカルな進行の場面では、勢いを感じさせるところもあり、このような武満もあるのかと非常に新鮮に聴けた。続くギター独奏の「フォリオス」は、この曲の献呈を受けた荘村清志氏の演奏で、同じホールで聴いたことがある思い出深い曲だ。そのときのいかにも決定版という印象の演奏に比べると、どうしても軽量級に響くが、これが現代の、「2016年のタケミツ」というものだろう。もっと思い入れを持った演奏を期待する向きも当然あると思うけれど。

 ピアノによる「フォー・アウェイ」は、ソステヌート・ペダルを多用したまさに<余韻>を聴くべき曲であり、こればかりはまさに実演で聴くべき曲だ。中川氏はテクニックも十分で、スタインウェイを良く鳴らしていた。最後の「雨の呪文」は、僕も初めて聴くアンサンブル曲で、ハープにヴィブラフォンが加わるその響きは、少し時代を感じさせないでもないが、その分、曲の構成は非常に緊密に書かれている(実際、1983年に初演されたらしい)。このステージのためだけに集まったメンバーだと思われるが、個人間のバランス・呼吸も良く合っていた秀演。

 「記念コンサート」と銘打たれてはいるが、聴き終わってみると全体で1時間ちょっとという体裁。演奏者も若手の方が中心で、余計な力みもなく淡々と演奏していた。現代音楽と言っても、演奏する方も、聴く方も、余計な力を入れなくて良いのは何よりのこと。武満さんの音楽も、いよいよ「古典」めいてきたということだろうか。

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