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2018年1月11日 (木)

リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その1)

 僕がいつもおじゃましている日本最大の(いや、おそらく世界最大の?)ハイドン音盤サイト『ハイドン音盤倉庫 - Haydn Recordings Aechive』で、毎年恒例の「H. R. A. Award 2017」が発表されている(>こちら)。これは同ブログの主宰者である Daisy さんが、その年にお聴きになった多数の音盤の中から、最も優れたものを部門別に選ぶ企画。その2017年の【交響曲部門】に選ばれたのは、カール・リステンパルトのLP(Nonesuch, 第21、48番「マリア・テレジア」所収)だったので、喜ぶやら、驚くやら、何だかそわそわした年始を過ごしたものだった。というのも、僕もこれと同じ演奏を含むフランス盤LPを以前から所有していて、この「毎日クラシック」のサイトでも紹介させていただいたことがあったから(>こちら)。この盤は「Le club francais du disque」というレーベルで、当該記事でも触れたようにジャケットはいわゆるペラジャケ、いかにも廉価盤の仕様である。シリーズ番号も入っていて、「PRINCEPS 18, No 347」とある。調べてみると、どうやらフランスで会員(クラブ)制で頒布されていたシリーズのようである。あまたのハイドン音源をお聴きになっている Daisy さんが「素晴らしい演奏と素晴らしい録音が揃った超名盤」(>(リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン))」とおっしゃるだけあって、演奏の立派さは半端ではない。リステンパルトが主兵であるザール室内管弦楽団から豊かな響きを引き出していて、これは現代のハイドン演奏から失われて久しいものだ。ただ、リステンパルトのハイドン演奏は、複数レーベルで発売されており、かなり複雑な様相を呈している。まだ完全にわかっているわけではないのだが、今回の受賞を機に(笑)、自宅にある盤や最近買った盤等を整理してみた。

 まずは「Les Discophiles Francais」レーベルに録音した、交響曲のモノラル録音のシリーズから(以下、「HOS」文字をクリックすると、「ハイドン音盤倉庫」さんのレビュー・ページに飛ぶ)。

1)交響曲第7番「昼」、第21番、第48番「マリア・テレジア」 Les Discophiles Francais, DF 183
※深緑の布が張られた豪奢な見開きジャケット。最初この盤のジャケット写真を Silent Tone Record さんのサイトで見たとき、てっきり上記「クラブ・フランセ」盤(第31、21、48番)と、下記4)の「クラブ・フランセ」盤(第6、7、8番)からの組み替えバージョンかと思い、『ハイドン音楽倉庫』のコメント欄にそのような趣旨のことを書いてしまった(Daisy さん、適当なことを書きちらしてすみません)。しかし今回、当該「ディスコフィル・フランセ」盤を手に入れよく聴き直してみると、こちらは明らかにモノラル録音であることがわかった。しかも、演奏自体もかなり違う。明確に違いのわかるところを一例挙げれば、「マリア・テレジア」の第3楽章において、モノラル版はメヌエットやトリオの後半部分をくりかえしているのに対し、ステレオ版はくりかえしていない。録音年は、1956年ではないかと思われる。

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2)交響曲第81番、第85番「王妃」 Les Discophiles Francais, DF 116 HOS
※こちらの「王妃」はモノラルで、録音年は1954年と言われている。後年のような洗練こそまだないが、Daisy さんも指摘されているようにモノラル特有の「引き締まった響き」が、ハイドンの飾りのない音楽に合っている。僕は所有していないが、「Club Mondial du Disque」というレーベルで、同盤のクラブ仕様盤も出ていたようだ(CMD 386)。後出のステレオ版の「王妃」(1966年収録)とは別録音だろう。「王妃」だけの10インチ盤も出ていたが、第81番の10インチ盤があったかは不明。なお、10インチ盤には、下記写真の無印盤(EX 25.036)のほか、ジャケット表に「connaissance de la musique」と記されたシリーズ(325.036)も出ている(裏面の解説文等は同じ)。

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3)交響曲第90番、第91番 Les Discophiles Francais, DF 113
※こちらは同じ「ディスコフィル・フランセ」盤ながら、美しいブルーグレー色の布が張られた見開きジャケットで、ちょっと所有欲をそそられる盤だ。録音年は、やはり1954年と言われている。第90番の序奏から主部にかけてモノラルならではの強い表出力で、いかにも迫力満点だ。

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 以上がモノラル録音(注1)。リステンパルトには、レーベルを変えてステレオ録音のシリーズもある。

4) 交響曲第6番「朝」、第7番「昼」、第8番「夜」 Le club francais du disque, (H)303
※こちらはおなじみの三部作が揃っている。ただし、私が所有している盤はモノラル仕様。もしかして上記1)と同じかと思ったが、やはり相違点がある。確かに、次の項の「CDF 347」にある「STERE O=スピンドルの穴」というラベル表記がないが、当時はステレオ装置が高いせいもあり、モノラル盤にも需要があり、多くのLPが両仕様で出されていたというので、その類いだろうか。これにも Nonesuch 盤が出ていて、海外のオークションでもよく見かけるが、こちらにはモノラル(H-1015)・ステレオ(H-71015)両仕様がある。この Nonesuch 盤のラベルには「Recorded in Europe by Club Francais Du Disque, Paris」とある。ちなみに Misidisc というレーベルからも同じ内容のLP(30 RC 699, Stereo)が出ているが、このレーベルは「クラブ・フランセ」から原盤を引き継いだと言われている(下記注を参照)。

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5)交響曲第31番「ホルン信号」、第21番、第48番「マリア・テレジア」 Le club francais du disque, CFD 347
※僕が最初に買ったリステンパルトのハイドンLP。ステレオ・バージョンで、確か Yahoo! オークションで3千円以上した。モノラル・バージョンのジャケット写真も初期LP専門店のサイトで見たことがあるが、僕は所有していない。同じ演奏を含むと思われる Accord 盤CD の記載によれば、「ホルン信号」「マリア・テレジア」は、1965年1月の録音とされる。また上記4)と似た幾何学模様のジャケットもあるようだ(CFD 2347, Stereo)。「H. R. A. Award 2017」を受賞した Nonesuch 盤は、リステンパルトの第21、48番に、若き日のギュンター・ヴァントが指揮した第82番「熊」と組み合わされている(注2)。上記4)同様に、こちらのNonesuch 盤にもモノラル(H-1101)・ステレオ(H-71101)両仕様がある。「ホルン信号」「マリア・テレジア」の Accord 盤CDへのリンクは、HOS

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6)交響曲第85番「王妃」、第100番「軍隊」 Le club francais du disque, CFD 2387
※1966年9月録音のステレオ版の「王妃」と、同年同月録音の「軍隊」を含むLP。「王妃」Accord 盤CDへのリンクは、HOS。「軍隊」Accord 盤CDへのリンクは、HOS

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7)交響曲第94番「驚愕」、101番「時計」 Le club francais du disque, CFD 2393 HOS(ただし Accord 盤CD)
※いずれも1966年9月の録音。非常に落ち着いた大人の音楽で、少なくともこれらを聴いている時間は、「これがハイドン」という気分に満たされる。なお、今見てきたザロモンセットからの3曲は、各国 Amazon や iTunes Store において MP3 音源で購入可能だ。 Accord 盤CDは今では廃盤のようなので、こちらをダウンロードするという手もある。ちなみに Prime Music 会員や Apple Music メンバーなら無料で聴くことができる。

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 これらステレオ・シリーズについては、後継の Musidisc レーベルで、4枚組のリイシュー盤も出ている(第6、7、8、31、21、48、94、101、85、100番。CRC 27)。

番外編:8)交響曲第49番「受難」
※こちらは、上記7)の最後に紹介したものと同じで、各国 Amazon や iTunes Store で MP3 で販売されている音源。今のところ出所不明だが、「モノラル・バージョン」とあるので、新しいものではないだろう。

 交響曲以外の曲は、次回に。

(注1)リステンパルトのモノラル盤には、「Forgotten Reccords」という復刻LP盤レーベルから板起こしCDが出ている。交響曲では、上記「ディスコフィル・フランセ」盤から、「第7、21、48番」、「第81、85、90、91番」の2セット3枚がCD-Rで販売されている。リステンパルトのハイドンを聴いてみたいが、LPはちょっと、という方にはうってつけだ(>こちら)。フランスのサイトだが、注文すると英語でメールがきて、1週間ちょっとで送ってくれる。値段はかなり高くなるが、日本の輸入CDショップでも取り扱っているところもある。
(注2)「Le club Francais du Disque」レーベルは、ギュンター・ヴァントがケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団と多くの録音を残したことでも知られている。近年、上記 Musidisc を通じ、TESTAMENT がモーツァルトを中心にいくつか復刻CDを出している。

(その1)交響曲編へ、(その2)その他編

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