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2018年1月20日 (土)

リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その2)

 リステンパルトのハイドン録音について、自宅にある盤や最近買った盤等を整理している。今回は、交響曲以外の曲。

 例によって、「Les Discophiles Francais」レーベルに録音したモノラル録音のシリーズから。

1)フルート協奏曲、2つのホルンのための協奏曲、オーボエ協奏曲 Les Discophiles Francais, DF 730.061
※ランパルが吹いたフルート協奏曲とピエルロが吹いたオーボエ協奏曲が1954年、アンドレ・フルニエとジルベール・クルジエ(クールシェ)による2つのホルンのための協奏曲が1955年の録音と言われている。今となっては、ハイドン偽作三部作という感じであるものの、我々としては古典派ならではの簡素かつ優美な曲に、虚心なく耳を傾ければ良いだろう。当時の管楽器は国ごとに特徴があって、フランスのそれは概して軽め、かつ華やかな音がした。かの国の往年の名手たちは、演奏そのものもいかにも軽やかで耳に心地よい。特に、2ホルン協奏曲は曲も楽しいし、演奏もベストに近いのではないか。それぞれに10インチ盤もあった(フルート、2ホルン、オーボエの順に、EX 25053、EX 25077、EX 25026)。交響曲の項でも触れたが、無印盤のほかジャケット表に「connaissance de la musique」と記されたシリーズも出ている。また、3曲とも前回(その1)の注で触れた Forgotten Record からCD-Rとして出ているほか、各国 Amazon や iTunes Store において MP3 音源も購入可能だ。余談ながら、ランパルとピエルロは後年、ヤーノシュ・ローラとそれぞれの協奏曲を再録音している(Sony)。また、クルジエも2ホルン協奏曲を再録音している(Erato、下記4)参照)

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2)ノットゥルノ第1番 Les Discophiles Francais, EX 17.040
※こちらは33回転・7インチ盤で、「NOTTURNO No1 EN DO MAJEUR」と1曲だけがクレジットされている。「第1番」というと「第1番ハ長調、Hob II : 25」 のように取れるが、実際に収録されているのは、現在「第4番ハ長調、Hob II : 31」と分類されている曲である。オリジナルは、2台のリラ・オルガニザータ、2クラリネット、2ホルン、ヴィオラ、バッソ(=チェロ)という編成であった(注1)。この盤では、のちにハイドンがロンドン(2回めの旅行)で同曲を演奏したときの編成に従い、ランパルのフルート、ピエルロのオーボエに、2ヴァイオリン、2ホルン、2ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成で録音されている。ソロの2人以外は名前がないが、ザール室内管のメンバーであったと思われる。無論、後述のステレオ盤のようなレンジ感は出ないものの、楽器の音色はよく録れているし、ランパルはやはりうまい。第3楽章では、ピエルロと絶妙なかけあいを見せる。この盤は、今回紹介した中ではやや珍しいかもしれない。前記 Forgotten Record が、「交響曲第7、21、48番」の復刻版CDにボーナス的に入れてくれたので、これを手に入れるのがいいかもしれない(ただし、表記は「Hob 2/25 」と間違い)。

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 次は、ステレオ盤から。

3)オルガン協奏曲(ハ長調)、ノットゥルノ第2番、協奏交響曲、ノットゥルノ第6番 Le club francais du disque, CFD 278
※交響曲編でも登城した「Le club francais du disque」盤から。オルガン協奏曲は、現在「第1番ハ長調、Hob XVIII : 1」と呼ばれている曲で、ソリストはヴェルナーのバッハ録音等でもおなじみのエヴァ・ヘルダーリン。このLPで聴くポジティブ・オルガンの音色は宝石でも散らすかのように美しいし、豊かな残響を伴った録音も優れている。現在ではホグウッドやコープマンなど、古楽器による優れた録音も出ているが、リステンパルト盤の余裕と豊かな響きには抗いがたいものがある。協奏交響曲は、「第105番、Hob I : 105」で変ロ長調。ヘンデル(ヴァイオリン)、ベティ・ ヒンドリクス(チェロ)、ヴィンシャーマン(オーボエ)、ジャック・オルティエ(バソン)というソリスト陣である。重厚さこそないが、バソン・フランセ等の音がいかにも鄙びた感じでなつかしい。ノットゥルノは2つあり、最初のものは「No 2」との表記だが、現在では「第3番ハ長調、Hob II : 32」と分類されている曲の方である。オリジナル編成は2台のリラ・オルガニザータ、2クラリネット、2ホルン、ヴィオラ、バッソ。このLPではロンドン版によっていて、2台のリラ・オルガニザータをフルート2本に、2クラリネットを2ヴァイオリンに置き換えている(コントラバスも追加)。本来、第2楽章アンダンテは、(くりかえしなしで)67小節あるが、ロンドンでの演奏に際し46小節に縮めたバージョンで演奏している。もう一つ「No 6」は「第6番ト長調、Hob II : 30」で間違いない。オリジナル編成は2台のリラ・オルガニザータ、2クラリネット、2ホルン、ヴィオラ、チェロ。この曲にはロンドン版はないのだそうだが、ここでは通例に従い2台のリラ・オルガニザータをフルートとオーボエに、2クラリネットを2ヴァイオリンに置き換えている(2曲ともに、ヴァイオリン等、弦の数は増やしている)。「Hob II : 32」はノットゥルノの中でも最も華があるし、「Hob II : 30」のアンダンテも愛すべき旋律を持つ佳曲だ。演奏は非常に優雅であるにもかかわらず、急速楽章のリズム感にも不足していない。リステンパルトの名に恥じない優れたものだろう。以上、1961年8月の録音。例によって、 Nonesuch 盤がモノラル・ステレオ両仕様で出ている(H-1024、H-71024)。同じく Musidisc(30 RC 670, Stereo)からも出ているほか、Westminster のバジェット・レーベルである The Music Guild にもステレオ盤(S-35)がある。また上記 Forgotten Record から板起こしCDも出ていて、それはそれでありがたいのだが、この盤の最初のノットゥルノのクレジットも「第2番へ長調、Hob II : 26」のままとなっている(上記 The Music Guild 盤も同じ)。ノットゥルノ2曲のみ、各国 Amazon や iTunes Store において「Mono version」なるものが MP3 音源で購入可能であるが、LPの方がずっと音は美しい。

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4)チェロ協奏曲第2番 Erato, STE 50266(STU 70266)
※アンドレ・ナヴァラをソリストに迎えたエラートへの録音。オーケストラは、「Orchestre de Chambre de la Radiodiffusion Sarroise(ザール放送室内管弦楽団)」との表記である。ちなみにこれまでの盤の表記は、「Orchestre de Chambre de la Sarre(ザール室内管弦楽団)」であった(注1)。アンドレによるトランペット協奏曲、バルボトゥとクルジエによる2つのホルンのための協奏曲(以上、パイヤール指揮)を併載したCDが国内盤でも何度か出ていた。が、元々はヴェイロン=ラクロワの独奏によるパイジェッロのクラヴサン協奏曲ハ長調(リステンパルト指揮)と組み合わされていた。フランスの名手たち、合わせて7人が演奏した協奏曲録音をセットにした「STE 50266-9」という4枚組でも出ていたほか、モノラル仕様として「LDE 3366」「LED 3366-9(4枚組)」もあった。また、Musical Heritage Society(US) など各国のレーベルからも、同仕様のLPが1966年に出ている。僕の所有盤はエラートながら「STU 70266」で、これは再発盤か。肝心の演奏だが、『ハイドン音盤倉庫』の Daisy さんがナヴァラの旧盤、パウムガルトナー指揮のザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカとの共演に関する記事では、「リステンパルト盤は名手リステンパルトのサポートがちょっと不安定で今ひとつピンと来ませんでした。」と書いておられる(>HOS)。実際、オケの状態がこれまで聴いてきた協奏曲やノットゥルノなどとは少し落ちるようにも感じられる。ナヴァラのソロは、この曲の演奏としてはかなり気迫のこもったものなので、それに引きずられ荒くなったのだろうか。ただし、LPで聴くと音の傾向はややまろやかになるが。録音年についてだが、国内盤CD等には「1960年代中頃」との記載があるようだが、エラートがワーナー傘下になってから出た欧州仕様のCD記載のクレジットによれば、「1965年6月12、13日」の録音と明記されている。

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 以上が僕が確認した限りの情報である。記載もれや錯誤があれば、ぜひコメント欄等でお知らせください。

(注1)「リラ・オルガニザータ」とは、ハーディー・ガーディーに小型のオルガン装置が組み合わされているような非常に珍しい楽器だそうで、現在ではハイドンの楽曲(協奏曲とノットゥルノ)が演奏される場合がほとんど。その場合も、原曲どおり2台のリラ・オルガニザータを使った演奏・録音は非常に少ない。「第1番ハ長調、Hob II : 25」と「第2番へ長調、Hob II : 26 」「第3番ハ長調、Hob II : 32」については、コワン/リモージュ・バロック・アンサンブル盤があった。ちなみに「Hob II : 32」は、全67小節の「version de Naples」(ナポリ・ヴァージョン)による(ただし、同盤収録の「第8番ト長調、Hob II : 27 」は、第1楽章に「ラルゴ」の序奏を付加し、使用楽器にフルートとオーボエ、ヴァイオリンを使ったハイドン自身の改訂によるロンドン・ヴァージョンでの演奏である)。
(注2)リステンパルトの録音の中で最も有名なものの一つに、バッハの『フーガの技法』がある。これも最初のエラートへの録音(1963年頃)はザール放送室内管になっているが、後年の「クラブ・フランセ」盤(1966年)はザール室内管のままである。おそらく実体的には同じオケだとも想像されるが、エラート盤には「放送」表記が多い。契約の関係で名前を使い分けているのだろうか。

(その1)交響曲編へ、(その2)その他編

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