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2018年1月21日 (日)

2017年まとめ

 2017年の忘備録かわりのまとめ記事。

 昨年末、ある日、急に僕が過去に書いた「クルレンツィスの『ドン・ジョヴァンニ』」 という記事にアクセスが集中するという日があった。調べてみると、『レコード芸術』誌が恒例の「レコードアカデミー賞」を発表する1月号が発刊されていて、クルレンツィス/ムジカエテルナによるチャイコフスキー『悲愴』が大賞をとっていた。そのことで、「クルレンツィス」とネット検索した方が急増したためと想像された。なんと大賞銀賞にも、僕が上記記事で絶賛したモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』も入選していて、まさに2017年を席巻した感じである。この『悲愴』(Sony)は僕も早々と注文を出していたが、それが裏目に出て「<輸入盤2017年10月27日発売Teodor Currentzis 『Tchaikovsky: Symphony No.6』(8898540435-2)に関するお詫びとお知らせ> 」にあるように交換対象となってしまった口である(泣)。最近、やっと交換手続きを終え、さっそく年始休みに聴いてみたが、確かにすごい演奏ではある。おそらくオケを徹底してしごいた結果だろうと思うが、クルレンツィス+『悲愴』なら「当然、こういう方向性になる」と先回りして期待してしまっていた自分もいて、この先、彼らがどうそうした我々の期待を裏切って!いくのか、その点がさらに興味深いところだ。

 余談ながら、同じようにソプラノ歌手のラケル・アンドゥエサについて書いた記事「新時代の歌姫 -- ラケル・アンドゥエサ」にもアクセスが急増した夜(12月14日)があって、これは2016年の6月7日に東京・王子ホールで収録された彼女のリサイタルが、2017年の年末になってNHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」で放送された日、と判明した。放送自体、僕は仕事で聴けなかったが、多くの方がその声、歌いぶりを聴かれて驚嘆されたのではないだろうか(12月28日早朝のBSでも流れたらしい)。

 時代の流れだろう。Facebook や Twitter で演奏家自らが発言される機会が多くなっている。例えば、「10月21日に行ったオーケストラ・リベラ・クラシカ第40回定期演奏会」について、Orchestra Libera Classica (OLC) の Facebook アカウントが、「モーツァルトの交響曲第40番をブライトコプフ・ウント・ヘルテル社が2014年に出版した楽譜に準拠して演奏しました。こちらのサイトで紹介されている「第1稿改訂版」(公演プログラムでは「第1稿・第3段階」と紹介)が今回演奏した版にあたります。 Hidemi Suzuki and Orchestra Libera Classica played on the concert last Saturday Mozart's Symphony No.40 "1st version , 3rd stage" based on the score published in 2014 by Breitkopf und Härtel. / http://www.academia-music.com/shopdetail/000000112942/」と書かれていた。この演奏会の模様は NHK・TV でも放送されたようだが、最新の原典版が複数の資料を混交し<決定稿>なるものを作るのではなく、このようにそれぞれの段階の稿を複数用意するようになったのは非常に良い傾向だろう。バッハの『ヨハネ受難曲』や一部のカンタータで、カールス社が複数の稿を出しているのはその典型で、つまりは原典版と言えども万能ではないということだろう。また最近は「自筆譜至上主義者」とでもいうような方などもいて、それだけを眺めて「ほかは全部誤り」みたいな物言いをする人も結構いる。その意味ではいつも書いているように校訂報告こそが大事で、そういった認識がますます広がることを心から期待している。余談ながら、上記 OLC の発言にもリンクされているアカデミア・ミュージック社で、僕もK.550 のブライトコプフ新版を買っているのだが、この「アカデミア」が各種新刊楽譜の情報を日本語で!いち早く我々に伝えてくれている役割は大きい。「アカデミア」は2017年にちょうど創業以来70年を迎えた老舗だが、月刊で出していた詳細なカタログ「アカデミア・ニュース」が2018年から隔月刊になるという。厳しい環境の中でも、ぜひ頑張っていただきたい。

 CDでは何があっただろうか。楽譜からみで言えば、上記カールス社が2016年に出したモーツァルトの『ミサ曲ハ短調 K.427』の新版に基づく演奏が、当の Carus レーベルから出た(フリーダー・ベルニウス指揮シュトゥットガルト室内合唱団、シュトゥットガルト・ホフカペレ)。この新版では、指揮者のベルニウスと、バッハ研究で有名なU・ヴォルフが補筆している。今回は「クレド」にはトランペットとティンパニを加筆しているが、「エト・インカルナートゥス・エスト」の2段の空きスペースに一対のホルンを加えることはしていない。女声ソリストのヴィブラートがごく稀に気になるが、シュトゥットガルト室内合唱団の透明な歌声は非常にすばらしい。あと発掘物で言えば、『ナンシー・ストレースのためのアリア集~サリエリ、モーツァルト、パイジェッロ、他』もおもしろい企画だった(Coviello)。ドイツ出身のソプラノ歌手マリー=ゾフィー・ポラークが、リリックな声でのびのびと歌っている。ナンシー・ストレースは、「フィガロ」初演でスザンナを歌ったイギリス人歌手。一昨年末に出た『Mozart & The Weber Sisters / モーツァルト・アリア集~ウェーバー三姉妹』(Erato/Warner)などもそうだが、こういうモーツァルトと交流のあった歌手たちをフィーチャーした企画は、もっと聴いてみたい。あるいは、ポラークも上記アリア集の中で歌っているマルティーン・イ・ソレルの『椿事 Una cosa rara』など、「フィガロ」と人気を競ったということで名前だけは有名なので、そろそろ全曲新盤が聴きたい。あるいは、『魔笛』と同時期のジングシュピールとか。

 コンサート映像やハイレゾ音源のネット配信も進んだ反面、LPレコードの復権も話題になった。メディアの多様化が進み、状況はますます混沌としてきている。が、やはり肝心なのは、<中身>=コンテンツであろう。その意味では、2018年も演奏法・レパートリーともに、新しい試みがどんどんと進むことを期待したい。

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