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2018年3月10日 (土)

リリー・クラウスの板起こしCD

 先日はリステンパルト&マカノヴィツキーのモーツァルトを紹介したが、そこで Silent Tone Record 製の板起こしCDについて触れておいた。今回は同じシリーズから、有名なモーツァルト弾き、リリー・クラウスのモーツァルト、ピアノ・ソナタ全集の板起こしCDを聴こう。こちらは、フランスの「Les Discophiles Francais」のモノラルLPが原盤。かつて僕が東芝 EMI の廉価盤LPで聴いていた頃には、1956年のモーツァルト生誕200年記念の年に、フランスのシャルランの手でソナタ全曲の録音が行われたという話であった。が、その後、その2年前の1954年にハイドン・ソサエティのために録音されたマスター・テープを復刻したというCD盤が出た(Music&Arts)。これは、なんとLPと同じ演奏であった。さらに最近 Warner Erato から出た「リリー・クラウス/パーロフォン、デュクレテ・トムソン、ディスコフィル・フランセ録音全集」でも、これに合わせたのか「Paris, Salle Adyar, February/March 1954」というクレジットに直されるようになっている。

 で、肝心の板起こしCDだが、こちらにも Youtube にソナタ第3番変ロ長調 K.281 の視聴ファイルがあり、それがかなりいい音に仕上がっているのである(>こちら)。無論、針音も聴こえるし、最強音等では雑音が混じる箇所もある。音場的にも少し荒っぽく響くかもしれないが、当のピアノの、鈴を鳴らしたとでも表現するほかない可憐な音色には、正直まいる。演奏としても、クラウスのモノラル録音の中でも白眉の出来で、この自在な演奏に慣れると他の演奏家が生ぬるく思えるほどだ。僕も、上記LPのあと、アートユニオン版、東芝版(ソナタのみ)、新星堂再発版、そしてハイドン・ソサエティ版などを買って聴いてきたが、クラウスの特徴でもある強弱緩急をつけたタッチの差がこれほど良く伝わってくる盤は、これら市販版にはないと思う。全体として市販CDは、ノイズが乗るのをこわがるせいか、高音を抑えこもった音に整音されされがちだからだろう※。

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 別の盤では、幻想曲ハ短調 K.475 とソナタハ短調 K.457 の演奏も、極めて迫力があり、いかにもリリー・クラウスらしい演奏になっている。そして、これも板起こしCDで聴いた方がずっと臨場感が出る。何万円もするオリジナルLPを買っても、なかなか頻繁に聴くという気がしないだろうし、これら板起こしCDならば、寝室でも車の中でもどこでも気軽に聴ける。このシリーズでクラウスの全集録音を、久しぶりに全曲ぜひ聴き直してみたいと思っている。

※ただし、新星堂が2005年に出した再発盤全集は、(僕の視聴環境では)例えばソナタイ短調 K.310 の冒頭などピアノの音が少し金属的になっていて、他盤とは音の傾向が違う。また上に触れた「リリー・クラウス/パーロフォン、デュクレテ・トムソン、ディスコフィル・フランセ録音全集」は、マスタリングをやり直したのか、比較的、澄んだ音になっていると思う。

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2018年3月 7日 (水)

リステンパルト&マカノヴィツキーのモーツァルト

 先月末、『ハイドン音盤倉庫』の Daisy さんが、「今日は秘蔵お宝盤。」との触れ込みのもと、「リステンパルト/ザール室内管の朝、昼、晩(ハイドン)」という記事をアップされた。こちらでも紹介した「Le Club Français du Disque」のLPだが、今回はそれに対抗し(笑)、同じ「クラヴ・フランセ」盤から、リステンパルトのモーツァルト盤を紹介したい。曲は、ヴァイオリン協奏曲第3番K.216、第4番K.218 の2曲。ここでヴァイオリンを弾いているのは、ポール・マカノヴィツキー(Paul Makanowitzky, 1920 - 1998年)というロシア系のヴァイオリニストである。スウェーデンのストックホルム出身とのこと。後年にはジュリアード音楽院で教鞭を執っていたようで、例えば原田幸一郎氏@東京カルテットのプロフィールなどにも、マカノヴィツキーに師事したことが出てくる。というような経歴は別にしても、これはなんと美しい、しかも均整のとれたソロだろう。美音のモーツァルトと言えばグリューミオが有名だが、それに勝るとも劣らないどころか、テクニックはマカノヴィツキーの方が上だろう。1960年前後の録音だと思うが、その時代の奏者にしては音程も実にしっかりしている。録音もすばらしく、「これぞモーツァルト」というような神々しいまでの残響を伴っている。また伴奏のザール室内管弦楽団(Saar Chamber Orchestra)との調和が抜群であり、ソロと伴奏のヴァイオリンの音色がこれほど合っている例を、僕は正直知らない。

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 実は、僕の持っているLPはモノラル仕様で、それはそれで十分美しいのだが、この盤にはステレオ仕様もあって、「異常に珍しい」(Silent Tone Record さんのサイト)のだそうである。というわけだから、それは当然ながら「異常に高い」(笑)。そして、その録音状態はモノラル以上の出来なのである。無論、僕自身もステレオ盤は持っていない。だが、上記 Silent Tone Record さんから、ステレオ盤の板起こしCDが出ていて、実はこれで聴いているというわけである。視聴ファイルが Youtube にアップされていて、最初の3分間を聴くことができるので、今回紹介しておきたい(>こちら)。

 「Le Club Français du Disque」盤などのフランスのマイナー・レーベル物には、まだまだ名盤・名録音が眠っていると思われる。いずれまた機会を見て紹介していきたい。

※このマカノヴィツキーのモーツァルト協奏曲盤には、他のショップからも複数の板起こしCDが出ている(エテルナトレーディング社さん、Forgotten Record)。また例によって、米ノンサッチから同じ録音のステレオ盤LP(H-71056)も出ている。ちなみにこちらは、比較的安価に手に入れることができる。

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