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2019年1月 6日 (日)

2018年まとめ

 2018年も、テオドール・クルレンツィス&ムジカエテルナは大活躍だった。マーラーの交響曲第6番のCDは、予想どおり、いや予想以上に素晴らしかった。2年連続の「レコード・アカデミー賞」大賞受賞というのも不思議ではない。彼らの活躍については、一般紙である朝日新聞にも特集記事が出たし、2019年2月には初来日が待っている。まだまだ快進撃は続きそうだ。

 年末には、HMV&BOOKS online が、「2017年11月1日~2018年10月31日までに発売されたクラシック商品の中から、お客様による投票と、HMV&BOOKS onlineクラシックのセールスランキングとを合わせ、この年一番の人気アイテムを決める「HMV&BOOKS online クラシカルアワード」」という新たな試みを始めた。総合1位が上記クルレンツィスのマーラーだったのは当然としても、第2位は僕も1票を入れたヒラリー・ハーンのバッハ「無伴奏」だったので、個人的にはうれしかった。デビュー盤(ソナタ1曲、パルティータ2曲)もバッハであった彼女が、何と20年の時を経て続編(ソナタ2曲、パルティータ1曲)を録音したのだから、これは驚き以外の何物でもない。演奏も期待以上の出来で、ソナタ第1番におけるフーガ後半の気迫には本当に圧倒された。ちなみに特設サイトには、投票時の私のコメントが載っている(笑)。

 このところ、ハイドンの交響曲が注目を浴びてきているようだ。ハイドン生誕300年にあたる2032年までにハイドンの交響曲全曲を録音しようとしているジョヴァンニ・アントニーニ&バーゼル室内管弦楽団(イル・ジャルディーノ・アルモニコ)を始めとして、ハリー・クリストファーズ&ヘンデル&ハイドン・ソサエティ、飯森範親&日本センチュリー交響楽団と、複数のシリーズ録音が続いている。シリーズ物では、他にトーマス・ファイ&ハイデルベルク交響楽団の全集もファイの意思を継いで続編が出ているし、鈴木秀美&オーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)も長期に渡ってがんばっている。ラトル&ロンドン交響楽団の『ハイドン・想像上のオーケストラの旅』や、ジュリアン・ショヴァン&ル・コンセール・ドゥ・ラ・ローグの「パリセット」等、話題の新譜も目立つ。以前、「2016年まとめ」という記事に、日本でハイドンの交響曲全集録音を目指されている右近大次郎さんから、

「ハイドンには奏者の腕を見せることが出来て、少人数で出来る曲が多いので、こういう若い団体が増えて、古典派の時代が来ると、ハイドン コレギウムを始めた時から思ってましたので、是非そうなって欲しいと思います。」

というコメントをいただいていた。ハイドンの初期・中期の交響曲がこれほどまとめてリリースされてくると、まさに右近さんの予言が当たってきたと思わざるを得ない。新ハイドン全集における交響曲の楽譜が出揃ったことも、そうしたハイドン・リバイバルの要因の一つを担っているのかもしれない。その意味では、校訂楽譜の存在は大きいと言わねばならない。一方、モーツァルトの交響曲録音は、エッティンガー&シュトゥットガルト・フィルの「交響曲第25番、第40番」、ヘルベルト・ブロムシュテット&バイエルン放送交響楽団の「交響曲第40番、第41番」が目立ったくらい。新録自体が少なくなってきたような気もするが、これも時代の流れだろうか。

 2018年は個人的に、モンテヴェルディのマドリガーレをよく聴いた。1月に出たポール・アグニュー&レザール・フロリサンの「マドリガーレ集~『クレモナ』『マントヴァ』『ヴェネツィア』 」(3CD)を聴いて、その音楽の素晴らしさ、演奏の完璧さに魅了されたからなのだが、この時代の音楽はもっと知られてもいいのではないか。このCD集にも含まれるデュエット「金髪の髪よ、美しい宝 SV143」(マドリガーレ集第7巻)など、その美しさ・親しみやすさは何物にも変えがたい音楽の一つだと思う。鈴木美登里さんを中心に結成された日本の声楽アンサンブル「ラ・フォンテヴェルデ」が、モンテヴェルディのマドリガーレ全曲録音を目指しているが、咋夏、順調に「第5巻」に辿り着いた。全曲完成まであと3分の1。ぜひがんばってほしい。

 ところで、上記「レコード・アカデミー賞」の発表誌である 「レコード芸術」(音楽之友社)12月号には、 例年、「レコード・イヤー・ブック」という付録が付いている。前の年、我が国で出されたディスクが一覧できる冊子なのだが、これが異常に薄い。ページ数でいうと260ページしかない。ちなみに手近にあった1993年発売のディスクを載せた「'94」を見たところ、528ページあった。つまり昨年2018年は、その半分の量だったわけである。ちなみに「レコード・アカデミー賞」は、「各年度(1年間)に、日本のレコード会社から発売されたクラシック・レコード」、いわゆる国内盤を対象にしているとある。なので、オペラ部門などは、「たった一つ。本格的新録音のオペラ録全曲はたった一つだった。(堀内修氏)」などというとんでもないようなことも起きているようだ。正直、この時代にあって、国内盤などというくくりに意味があるとは思えない。この際、「レコード・アカデミー賞」も、たまたま!国内盤で出たディスク内で競うのではなく、日本人演奏家部門(確か、かつてあった)や、日本のレコード会社の企画盤部門、あるいは日本での録音部門とかのレギュレーションで競う方がずっと良いのではないだろうか。というのも、上記「ラ・フォンテヴェルデ」のモンテヴェルディや、ジョスカン・デ・プレの「ミサ曲全集」を録音中のヴォーカル・アンサンブル・カペラなどの取り組みこそ、賞でもって応援すべきではないかと思うからだ。そうした姿勢こそが、長い目で見て、国内のクラシック・ファンを育てていくことにつながるはずなのだが。

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