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2020年5月10日 (日)

ジングシュピール『慈悲深い托鉢僧』(その9)

(大変久しぶりですが、ジングシュピール『慈悲深い托鉢僧』の紹介が途中になっていたので、続けます。)

 我々のジングシュピールもいよいよ最終幕(第3幕)。バゾーラの地に主人公たちを追ってきた托鉢僧は、ゾフラーノに女性には注意するよう、また熱情に自分を失わないよう忠告する。以下、托鉢奏のアリア。変ホ長調。

「夫が優しすぎるときはいつでも
彼の妻に横柄さが湧き上がる。
彼の愛があまりにも大きければ
彼女はそれをあまりにも当たり前のようにとるでしょう。
それゆえ、あなたが彼女を愛する前に、彼女を試すのです!
彼女と、彼女の心の働きの両方を。
あなたが最初の段階で注意していなければ、
結末はアンハッピーなものになるでしょう。」

 このバスのアリアは、歌詞のアンチ・フェミニズム的な中身は別にして(?)、低いFまで下がる声域や音楽自体の雰囲気は、『魔笛』でザラストロが歌う高貴な歌によく似ている。いやいや、実はザラストロの一党も、一見、聖人ぶってはいるが女性蔑視は甚だしかったっけ(苦笑)。

「(ザラストロ)高慢な女だ。/お前たち女の心を導くのは男たるものの務め。/男なくしては、いかなる女も/道を踏み外してしまうものだ。」『魔笛』第一幕・第18場から
「(弁者&第二の神官)女の悪だくみから身を守れ、/これが盟約の第一の義務だ。/賢い男でもだまされ、道を誤った。/なすべき務めと備えを怠ったのだ。/賢い男も結局は見捨てられ、誠を尽くしたその報いはあざけりのみ。絶望になすすべもなく、死と絶望がその報い。」同第二幕・第3場から

 さて、そのありがたい忠告にもかかわらず、ゾフラーノは再びゾノミーデとその父にだまされて、彼女らを許してしまう。二人は再度、お互いの愛を誓い合う。こちらは、一転、軽快なテンポのデュエットで。途中で3拍子系のリズムに変わり、お互いが親しげに呼びかわす。

「お互いが創り上げた私たちの魂は、ひとつになる。
そして、愛情もひとつに。
不信が、私たちをこれ以上苦しめることはありません。
悲しみは決して私たちを悩ませません。」

 にもかかわらず、再び彼女は、「魔法のポーチ」を普通のポーチとすり替えてしまう。マンドリーナからは「魔法の太鼓」の秘密も聞き出し、それをも盗み出す。そしてそれを使い軍隊を召喚し、ゾフラーノとマンドリーノを王国から追い出してしまう。主人公たちの絶対絶命のピンチ!

 托鉢僧は、キング・アルマンドールの幽霊の姿を借り、追放されたゾフラーノの前に現れる。そして敵に対しより男らしく、より力強くあるよう戒める。「息子よ・・・、お前の臆病な行ないが試されている。全面的な手助けはまだなされていない・・・男らしくあれ、そしてお前の持つすべての力を尽くして敵をたたくのだ・・・」。この「訓戒」部分は、管弦楽付きのレチタティーヴォ(ロ短調)で書かれていて、音楽的にもよく書けている。ここでマンドリーノはようやく「魔法の鈴飾りの頭巾」の使い方を学んだらしく、歌を歌う托鉢僧たちを呼び出し、フルーツやパン、ワインの入ったかごを持ってこさせる。

「(托鉢僧たち)ヴィノ・パニ・トルカ・カニ・イロ・ケジ・パ・パ・パ。
ミシ・ヴァニ・ミツ・パニ・プリマ・ヴェシ・パ・パ・パ。
パ・パ・パ・ぺ・ファルチャ・トゥ、パ・パ・パ・ぺ・グ・グ・グ・・・」。

 おや?これもどこかで聞いたことがあるような擬音だ・・・。で、魅惑のフルーツを食べてはいけないという忠告に抗えず、それを食べたマンドリーノの鼻は長くのび、お腹は大きく膨らむ(きっと、会場は大爆笑!)。一方、ゾフラーノの方は、このフルーツは、うまく使えば彼らの役に立つことに気がつく。二人は、托鉢僧に扮して、再度バゾーラに向かって出発する。

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