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2021年12月 2日 (木)

「バイロイトの第九」の新音源!登場(その4)

 ネットショップで注文を出しておいた BIS 盤の「バイロイトの第九」がようやく届いた。予想どおり、中継元のバイエルン放送に残っていたテープを元にしたセンター盤=Orfeo 盤と同じ内容であった。アセテート盤に記録されていたようで、かすかに針音が鳴っている。BIS 盤はごくわずかにテープスピードが速いようで、当然ピッチも微妙に違うが実用上は問題はないだろう(厳密にいえば第4楽章の途中までの差が大きいのではないかと思う※)。

 この項の(その2)で指摘しておいたセンター盤への疑問点のうち、第1楽章冒頭に被っていた「金管楽器の管に詰まった唾を「ふー、ふー、ふー」と吹き出しているような音」については、BIS盤にはない※※。BIS 側の説明では、ごく短い欠落部や聴衆の雑音はそのままにしたということなので、これはバイエルン側の記録の際に入ったということになる。また、第4楽章の歓喜の歌の旋律が出る箇所の「編集痕」もBIS 盤にはなく、この箇所の休符=無音部分が約1秒ほど長くなっている。このことは BIS 盤が生放送の記録であることを裏付ける重要な証拠になるだろう。ただし、今回の盤にはこの演奏会自体の説明や録音テープの由来等についての説明はない。先に触れた「無編集」であることの説明のほかには、「第九」の曲解説、フルトヴェングラーのバイオグラフィーが入っているだけである(おいおい。この盤の場合、それって必要?)。番組の放送記録や中継記録などの客観的資料は、放送局側にも残っていなかったのだろうか? 僕自身、この盤の信憑性に疑念を持つ立場にはないが、せめてそうした配慮は欲しかったところだ。

 ところで、(その3)でも述べたように、あとは EMI のプロデューサー、ウォルター・レッグが、「バイロイトの第九」の発売にあたり、なぜ全編で本番の録音テープを使わなかったのかという議論が残されている。1951年7月29日の「第九演奏会」のあと、楽屋に戻ったフルトヴェングラーをレッグが訪ね、このように言ったという。

「昔聴いた第9の方がずっと良かったですよ」(『エリザベート夫人の回想』2004, Grand Slam GS-2205)
「A good performance, but not as good as it might have been」(Richard Osborne, 2000, EMI 5 67496 2)

 若干ニュアンスの違いはあるが、彼が現場で聴いた演奏に対し、フルトヴェングラーならもっと良い演奏ができたと感じていたことは想像に難くない。1954年冬にフルトヴェングラーが急逝。やむなく手持ちのライヴ録音からレコードを出すために各種テープを漁ってはみたレッグが、結局、ゲネプロの演奏の方を中心に編集されたテイクを選んだということだろうか。いずれにせよ、これはもはや確かめようのないことには違いないが。

※ただし、どちらの盤のテープスピード=ピッチが正しいかは、もはや確かめようがない。
※※空耳程度の話だが(笑)、BIS 盤の第1楽章冒頭部分には「キーキー」という鳥の声のようなものが、ごく小さく入っている(15秒〜18秒あたりがわかりやすいか)。

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