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2022年1月26日 (水)

板起こしで聴くメロディア盤のフルトヴェングラー (その3・ベートーヴェン6)

 前回のベートーヴェン交響曲第7番に続き、第6番『田園』を取り上げる。フルトヴェングラーのベートーヴェンと言えば、3、5、7、9といった奇数番の交響曲が有名で、そのあおりを受けてかこの曲はそれほど話題にならない。数多い彼の録音の中でも、非常に特徴的な演奏ではあるのだが・・・。実際、復刻盤の数も多くない。

 レコード番号は「33D-02777/78」なので、(その1)の注に書いたように「33D-027779/80」という番号を持つ第7番と連番になっている。こちらもレコード番号の上に「GOST 5289-68」という数字がついたものが初出であるという。レーベルの色も第7番と同じく、モスクワのアプレレフカでプレスされたピンクと、レニングラードでプレスされた黄色が基本。上半分に記された「MELODIYA」という文字が、中白抜きの書体と、普通のベタ塗りの書体の2種があるところも同じ。マトリックスは「A面3-2・B面3-2」。僕が最初に聴いたメロディア盤は、実はこの『田園』で、第1楽章の冒頭部分の弦の響きを聴いた時には、その穏やかな表情と豊穣な響きにうっとりさせられたことを、よく憶えている。これはベルリンの国立歌劇場で行われた定期演奏の録音だというが、若干エコーがかけられている可能性もあるだろう。美しいことは美しいが。

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 残念ながらこの第6番には、ピンク・イエロー両盤とも、はっきりそれと明記された板起こし盤はない。ただ別にホワイト・レーベルの盤があり、平林直哉氏が主宰する板起こし盤レーベル「Grand Slam」の前身のCD-Rレーベル「Serenade」に、その復刻とされている盤があった(SEDR-2009)。以下はそのメーカーによる紹介文(注1)。

「メロディアLPからの復刻盤であるブラームス第4(SEDR2003)、ベートーヴェン第9(SEDR2004)を発売して以降、幸いにもフルトヴェングラーのメロディア盤LPを十数枚入手した。それらを過去のLP、CD等と比較試聴し、復刻に値する結果が得られると判断したものだけを、今回、 SEDR2008、2009、2010、2011の4枚として発表することになった。このCDRでは「田園」がホワイト・レーベル、それ以外はピンク・レーベルから復刻したものである。これらのLPが、過去に発売されたメロディアのLPの中でも最高の音質かどうかは判断できないが、現時点では望みうる最上の音質であると考えている。とにかく、このCDRはその昔出ていた伝説のメロディア盤がどのような音であったか、それを知るひとつの手がかりとして世に問うたもので、各方面からのご意見、ご批判をいただければ幸いである。 【平林直哉】 」

 メロディアのホワイト・レーベルと言えば、プリ・メロディア時代の白トーチ盤等があるにはあるが、第6番(および第7番)にはプリ・メロディア盤は存在しない。では、何を使ったか。

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 実は GOST73 には、ホワイト・レーベル(レニングラード製)があった。この盤あたり候補になる。もしそうだったなら、「これらのLPが、過去に発売されたメロディアのLPの中でも最高の音質かどうかは判断できないが」という平林氏の留保も、ある意味理解できる。このSerenade 盤は、音圧レベルが非常に高く、アンプのボリュームを8時くらいにすると、もう普通にうるさい(笑)。強音部でビビリが出るし、残響成分は抑えられていないので、低音がボン付き気味ではある。が、実はこれは他の板起こし盤も、多かれ少なかれ似たような傾向にある。

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 こちらはモスクワ・アプレレフカ製の GOST73。これらやや後期の盤については、「音が鈍く聞こえる」という方もいらっしゃる。が、実際 GOST73 盤を聞いたが、初出の GOST68 盤と比べてもそれほど遜色はない。ちなみにこのピンク・レーベル盤のマトリックスは両面「3-2」のまま。「交響曲第6番『田園』のマトリックスが、初期プレスも後のプレスもA面3-2・B面3-2で変わらない」とする人もいるが、僕の所有する上記 GOST73 のホワイト・レーベルのマトリックスは「A面4-3・B面3-2」で、A面のみ番号が上がっていることは事実だ。DREAMLIFE から同じ平林氏のプロデュースで出たSACD/CD(DLCA-7009)も出ていて、パックインレイに記されたレコード番号は「D027777〜8」。これまでの通例から、上記 Serenade 盤と同じLPからの復刻という可能性もある。Serenade 盤同様、音圧レベルがやや高めで暗騒音が耳につくし、針音も多めである。それを除けば、音自体は決して悪くない。

 さて、この曲にも青レーベル盤があって、こちらも新世界レコード社が日本語の帯をつけて直輸入販売している(「33D-027777/79(a))。裏ジャケットの解説は英語になっており、演奏者はやはり「ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル」名義。上に修正シールが貼られている。

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 「OPUS蔵」盤(OPK7001)は、この輸出用・青レーベルを復刻している。このレーベルにしてはあまり低音は強調していない方だと思うが、この曲のトラックには音量の増加とともに「ジジジ」という雑音が混じる。板起こしに使った盤の状態が悪いのか、レコード針との相性なのか、かなり耳障りだ。このレーベルは正式なメーカーではないのかもしれないが、この点、製作者側はどう考えているのだろう。無論、原LP盤はそういうことはない。

 一方、Delta 盤(DCCA-0007)の使用LPは、「ブルーメロディア盤(ガスト68相当)」との表記。上記輸入盤青レーベルか、あるいはこちらの「Записано ВСГ」表記盤を使ったと考えられる。ちなみに後者の盤を「VSG盤」と呼び珍重するべきか否かについては、この項の(その2)に詳解した。第7番と同じく薄い白地の簡素なジャケットに入っている。「MADE IN USSR」の表記入り。Img_3887

 Delta 盤の方はスクラッチ・ノイズはほぼないし、さすがにきれいな『田園』が聴ける。が、こちらには、テープ録音のヒスノイズのような音が少し入っている点が気になる人もいるかもしれない。ちなみに解説には「ここでは一つの試みとして自然さを失わない程度に音質を調整することにした。」とある。そのために入ったノイズだろうか。また曲冒頭の低弦の音が、ほんの一瞬だがフェードイン気味に始まる。元LPでは少し前から録音が始まっているのだが、板起こしの際に楽音ギリギリで始めようとした結果、このようなことになったのだと思うが、これはかなり残念だ。

 1990年頃にソビエトから日本に直輸入された黒レーベル盤にも、この『田園』はある(M10-27777 004)。ちなみに僕の所有盤のうち一枚は、ジャケットがワーグナーやラヴェル等の盤のものになっていて、わざわざ「ジャケット違い」というメーカー側のメモが入っている。写真下段は、正しいジャケット。盤質も非常に良く、何の問題もなく良い音で鳴る。

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 今回、3枚の復刻盤を紹介したが、これらの視聴時にあらためてLPを聴いてみたところ、スクラッチ・ノイズを除けば元LPの音は非常に優秀で、あらためてこのフォーマットの素晴らしさを再認識した。この交響曲第6番のメロディア盤は、冒頭に書いたように他の奇数交響曲ほど人気がないためか、海外の中古市場なら千円台で買える。手軽にメロディア盤に親しむには最適だと思うので、気になる人はチャレンジしてみてほしい。

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