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2022年2月19日 (土)

板起こしで聴くメロディア盤のフルトヴェングラー (その8・ベートーヴェン9続き)

 さて、今回は前回の続きで「ベルリンの第九」の真正メロディア盤を聴いていく。以下の写真は GOST61 のアプレレフカ(モスクワ)盤。

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 第1楽章の初めの方で、数カ所で傷による雑音(1箇所は針が飛ぶ場合あり)が入るというので非常に安く買ったものだが、他の面のコンディションは良好だった。僕がこれまで聴いてきた「ベルリンの第九」と言えば、フィリップスの廉価版LP(>>こちらを参照)、あるいは学生時代に買った1枚組のエヴェエスト盤LPだったが、それらに比べると実にすっきりとしたきれいな音で、初めて聴いたときには本当に驚いた。マトリックスは、「A面2-1・B面2-1・C面2-3・D面2-2」であり、これは前回紹介した OPUS 蔵盤のライナーノーツに記された「(2枚目が GOST61 )の青トーチ盤」と同じである。このLPの第4面は全編「ハイドン・ヴァリエーション」なので、「第九」に限るなら原理的には前回取り上げた「プレ・メロディア盤」と同じマスターからできていることになる。それでいて、バックのノイズは非常に低く、僕の視聴環境では正直、CDより済んだ音がする。

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 会員制CDショップ「アリアCD」のCD-Rレーベル「アリア・レーベル」に、この GOST61 盤から復刻された盤がある(AR-0022)がある。やはり雑音は少なめで、元LPと音色感は合っている。ただし、第2楽章の始めあたりの強音部では、歪みが目立つ。いくら60年近く経ったレコードとは言え、LPではそういうことはないのだが。
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 一方、あまり数は見ないが、レニングラード製のイエロー・レーベル盤もある。この上の写真の盤は GOST68。こちらは製造工程が改善されたのか、盤質由来のノイズはかなり少なくなっている。

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 こちらも GOST68 だが、アプレレフカ(モスクワ)製。例によって若干、ザラザラ感が残る盤。これらの盤のマトリックスは、「A面2-2・B面2-2・C面2-3・D面2-2」なので、1枚目は上記の盤より番号が上がっている。そのためか僕の所有する盤では、GOST68 の方がほんのわずかに音が重い感じはある。ただ、「そもそも『第九』に関しては、Gost-56・61とGost-68とは大きな音質の違いがあって、比較すると、Gost-68は音の豊かさがかなり失われている。」というようにおっしゃる方もあるが、これまで聴いてきた曲でも GOST68 で急に劣化しているという印象は少ない。使う針を選べば十分深い音だと思う。

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 また GOST68 盤は、より古い版に比べ当然ながら状態が良い盤も多い。なので、それを復刻に使ったものがいくつかある。まず Serenade 盤(SEDR-2004、2002)。GOST 番号については記載がないが、パックインレイに記載されたレーベル写真(一部)で、GOST68 であることがわかる。ライナーノーツには、こうある。

「ブラームスの第4(SEDR2003)は〈たいまつレーベル〉であるが、この第9は〈ピンク・レーベル〉である。未確認の情報によると、この第9もまた〈たいまつ〉が最も鮮明な音質らしいが、それを確認する手だては今のところ全くない。本来であれば〈たいまつレーベル〉のLPも入手し、この〈ピンク・レーベル〉と比較して、良い方を出すべきであろう。だが、いくら〈たいまつ〉とはいえ、やはり問題なのは保存状態である。つまり、保存状態の良くない〈たいまつ〉と、状態の良い〈ピンク〉となると選択はむずかしくなるだろう。」

 しかもこの復刻に使われた盤は元々は「海外の倉庫に眠っていた手つかずの、つまりは全くの新品」だっただそうで、「従って、現時点でこのCDRは当時のメロディアの第9の音を偲ぶには最適な資料となりうる、このように考えて復刻を決意した次第である。」とのこと。相変わらず出音レベルは高く、それに伴いやや音が歪む箇所もあるが、(その6)で聴いたブラームスの第4番と同じくこのレーベルの初期のものなので、決してやり過ぎてはいない。ミント盤だったとあって針音も少ない。他に Serenade 盤を出している平林直哉氏がプロデュースした DREAMLIFE 盤(DLCA-7005)がある。こちらの使用盤表記には「D10851〜3」とだけある。詳細は非公表ながら、同シリーズのシューベルトの交響曲第9番の巻(DLCA-7010)のライナーノーツに、「このシリーズのDLCA-7005に使用したLP」として、Serenade 盤と同じ真正メロディア盤のジャケット写真を載せている。SACD層で聴くとさすがに音に余裕があるし、やや落ち着いた雰囲気の好復刻になっている。

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 GRENNDOOR 盤もこの GOST68 を「メロディア盤の中でも音質の一番良い68年プレス盤」として、原盤に使っている(GDCL-0016)。解説の桧山浩介氏は、この「第九」の録音が「演奏を記録したマグネトフォン録音としては最初期のものにあたり、そのために復刻に際してはもっとも慎重な作業が求められるものの一つである。」と書いている。具体的には、レベル変動、音とびの修正、コンプレッサー処理の結果生じている全体にわたるダイナミックレンジ幅の補正、そしてピッチについての配慮などを上げている。その上で、この修正には「作業者の音楽一般についての素養や音楽性、さらには「第九」そのものについての楽曲上の知識など、さまざまな条件に恵まれた時にはじめて満足できるものが出来上がる困難な作業であろうが、おそらく20種類は優に超えるであろう大戦中の「第九」の復刻CDのなかで、このCDはこれらの条件がもっとも理想的な形で仕上がったものとして高く評価いたしたい。大戦中のフルトヴェングラーに関するドキュメントとして最上位に位置付けられるものと確信する。」と書いている。で、実際の音はどうか。音はこもっており、ガヤガヤというバックの雑音も大きいので、会場の音がマスクされた感じになる。第2楽章の冒頭など、かえってダイナミックレンジ幅が狭まって、平板にならされているような印象だ。GOST68 自体は、大変素直な音なのだが。

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 他にこの「第九」にも、日本に輸出された新しい黒レーベル盤がある(M10-10851)。

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 OTAKEN レコードから、この盤を使った復刻盤がある。このレーベルの主宰者・太田憲志氏は、以下のように書いている。

「『当CDの音源を提供して下さいましたのは、皆様よくご存知の音楽評論家、小石忠男先生です。ソ連邦崩壊と前後して、メロディア社からフルトヴェングラ-の多くの戦中録音がLPレコードで復活したのは、私どもの記憶に新しいところですが、そのためにご尽力されたお一人が、、他でもなく小石先生その御方であられたそうです。(中略)ただM10シリ-ズと言われる本シリーズの復刻となると、少々疑問に思われる方もあるやも知れません。かく言う小生も先生からこのシリーズを譲り受けた時、ありがたい気持ちと同時に、正直戸惑いを覚えたのも事実です。ところが聴いてびっくり玉手箱!何とこれらのレコードはクリアーに鳴り響いていることでしょう!小生手持ちの同シリーズの何点かと聴き比べても明らかに違うのです。早速先生に問い合わせたところ、今回ご提供いただいたレコードは、このシリーズ用に新たに製作されたメタル原盤からのファーストプレス品だからではないか、とのことです。ならば、アナログレコードは、製造ナンバーが若いほど高密度、高精度なのですか?とお聞きしましたところ、間違いなくそうです、とのことでした。」

 黒レーベル盤の音は、「プリ・メロディア盤」等とは若干変わっているが、一般的にはこの盤の方が一皮向けた音だと思われるだろう。この項の(その7)で紹介した平林氏のコメントにもあるように、この曲の第4楽章、特に後半は、どうしても歪みが多くなり、ピッチも下がり気味になる傾向にある。その中で、この後半部分は、この盤が一番鮮明に聴こえる。黒レーベル盤については、いろいろマイナス意見もあるが、「第九」については、かなりアドヴァンテージがあるということだ。OTAKEN 盤も雑音は少なく、デジタル風。高弦が金属的に響くが、「黒レーベルらしく」は仕上がっている。

 第2楽章の初め、1分52、53秒あたりの音飛びだが、今回聞いた中では、Serenade 盤と DREAMLIFE 盤は未修正で、それ以外の盤では修正しているようだ。

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