2019年3月 6日 (水)

エアチェック再開の記(その2)

 (その1)では、FMチューナーを使ったエアチェック再開について書いたが、今回の話題はネットでのサイマル放送の録音について。NHKのラジオ放送については、「らじる・らじる」というサービスがあり、パソコン(Web)およびアプリでの視聴が可能になっている。これは圧縮音源(HE-AAC 48kbps)ながら、ノイズのないクリアな音声ということで録音対象としても有力である。昨年6月の『ステレオ』誌の特集「FM聴こうぜ」でも、この録音方法が紹介されているくらいだ。実際、ネットラジオ用に有料/無料の録音ソフトがすでに数多くあって、検索するといろいろな記事が引っかかってくる。僕が日常的に使っている Macintosh でも対応ソフトがいくつかあるが、タイマー録音用として1台専用にしたいので、以前、子どもに使わせていた Windows7 のモバイル・パソコン(Sony Vaio VPCW219AJ)を再生利用することにした。ハードディスクを安い SSD に換装し、OS を再インストール。余計なソフトはアンストールしたが、なぜか肝心の無線LANが不安定なところがある。ただしこの機種には、今では珍しい有線LANポートもあるので、余っていたLANケーブルでルーターに直結しておいた。実際、この方が無線LANよりは、かえって通信状況も安定しているだろう。で、次は、いよいよ録音ソフトの選択だ。

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 Windows で、「らじる・らじる」などネット・ラジオを録音するフリーソフトとしては、「どがらじ」というものと、「Radikool」というものがあり、前記『ステレオ』誌の記事でもこの2種が推奨されている。どちらも Windows7 で使用可能とのアナウンスだったが、実際にインストール作業をしてみると、Servise Pack 1 にまでアップデートしておかねばならないことが判明した(Microsoft .NET Framework のバージョン関係らしい)。これがなかなかの手間で、何度もダウンロードとアップデートを重ね、結局、半日くらいかかった。その後、無事2つのソフトをインストール。それぞれを使って、番組の録音も試してみた。GUIや使いやすさの点では、「どがらじ」が勝る。「らじる・らじる」で受信した音楽データを、再エンコードなしで録音できるという点も非常に良い。ただ、今回は電源管理に優れている「Radikool」の方を選んでみた。録音レートも、設定画面で「m4a」に変更し、少し設定をいじれば「再エンコードなし」に設定し直すことができた。100分の番組「ベスト・オブ・クラシック」を録音してみたところ、1回の番組で35.6MBとなったので、計算上は1か月すべての放送を録音しても、1GBの記憶領域で済むことになる。ちなみに(その1)で触れたアナログFM放送を PCM 録音したものでは、同じ「ベスト・オブ・クラシック」1回分だけで1.09GBのバイトを消費するので、これに比べるとその差は歴然だ。たまたま上記 Vaio には、なつかしいメモリースティック・デュオ・プロのメディア・スロットがある。僕の場合、HARD OFF で投げ売り状態の小容量メモリースティック(1GBや2GB)を仕入れてきて、これに1月分の録音を何も考えずにまとめて入れておき、バックアップがわりにしている。

 さて、肝腎の音質はどうだろう。今週初めの「古楽の楽しみ」は、僕の好きなルネサンス期の声楽曲を流しているので、これを録音。m4a のまま iPod に移して就寝前に聴いてみた。左右チャンネルの分離も充分以上だし、何よりノイズレスである点は大きなアドヴァンテージだ。ボリュームを上げていっても雑音は皆無。この点では、ベッドサイドに置いて使っている携帯型のCDプレーヤー(Discman)よりも優れていて、同じ音源を元のCDメディアで聴くよりも、静寂性の点では勝っていると思われる。もはや携帯型プレーヤーやミニ・コンポ、レシーバー等で気軽にFM放送を楽しむのは、このネット音源を活用することで十分であろう。今日現在、我が家の Vaio では、この「古楽の楽しみ」に加え、「ベスト・オブ・クラシック」、「N響 ザ・レジェンド」を自動録音する設定としている。仕事で遅くなった日など、まったく放りっぱなしにしているが、それでトラブルになったことはない。このうち何度も聴きたいと思う番組・回については、アナログFMの PCM 録音でも重複録音し、CDに焼いて保存する、というエアチェック・ライフに、当面は落ち着きそうだ。

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2019年3月 1日 (金)

エアチェック再開の記(その1)

 先日、カセットテープを聴くことができるウォークマンをオークションで見かけたので、落札してみた。WM-EX1 という再生専用の機種で、特別な機構は付いていないものの、そのシンプルさがかえって潔い。かつてFM放送をエアチェックしたテープが実家の屋根裏倉庫に大量に保管してあったので、早速、その一部を持ち出して聴いてみた。テープ自体はすでに30年程経過しているのに意外なほど劣化しておらず、想像していたよりずっと音が良い。カラヤン晩年のライヴや、若き日のアバド、ムーティなどの溌剌とした演奏をしばし楽しんだ。無論、これらのうちいくつかの演奏はCD-Rでも出ていたりしている。が、こちらのテープはあくまで個人で利用するための録音であり、著作権的にも問題がないというのは、何とも気分が良い。

 その勢いをかって、FMのエアチェックを再開してみたいという気が起こり、2月になってからいろいろ調べてみた。まず、当時良く売れたというパイオニアのシンセサイザー・チューナー(F-120D)を物置部屋から引っ張り出してきた。が、実家に住んでいた頃とは電波事情も変わっていて、T型の屋内アンテナをつけてみただけではなかなかきれいに受信できない。数年前は、壁につけられたテレビのアンテナ端子につなげば受信できたので試してみたが、地デジ化に伴ないVHFアンテナを降ろしてしまったこともあり、こちらもほとんど感度がない。そこで知り合いの電気屋さんに頼み、手頃な屋外用アンテナをベランダに立てることにしたのが、先週の木曜日のこと。上記チューナーもチューニング・スイッチの接触が悪くなりかけていて(この機種の弱点・・・)、この際、せっかくなので往年のバリコン・チューナーを使ってみたいと思いたった。たまたま近所の HARD OFF に出ていた YAMAHA T-3 という5連バリコンの機種を買ってみた。これでNHK-FM のクラシック番組を聴いてみると、実にやわらかい音楽的な音がする(※1)。T-3には出力端子が2系統あるので、一つは録音用、一つはモニター用としてアンプにつなぐことができるので、これはこれで都合が良い。以上で、受信まではOK。さて、問題は、録音の方法である。

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 さすがにテープ録音というのは、もはやありえないだろう(カセットデッキ、DATデッキはまだ自宅にあるが・・・)。いったんデジタル機器でデータ化しておけば、場所もとらないし音源の管理だって楽である。ネット検索してみると、A/Dコンバーターを使いパソコンに録音しているという方が最近は多いようだ。ただ我が家の場合、パソコンをチューナーの近く、テレビ下の備え付け家具の中に収納することになり、ノイズ対策的に考えても不安がある。日中は仕事で家人ともども留守の場合が多いので、熱のことも心配だ。そこで、パソコンの代わりにICレコーダーを使うという方法が最も手軽そうだということで、こちらの方面で引き続き調べてみた。

 条件は2つ。タイマー録音(留守録音)ができるということ。世は圧縮音源ばやりだが、せめてCD並みの無圧縮音源で録音したいので、ライン入力を PCM 録音できるということは必須だ。後者は意外に盲点で、ソニーのある機種などはマイクからは PCM 録音できるが、ライン入力は MP3 のみというものもある。しかも、こうしたことはカタログデータからは意外にわからないので、注意が必要だ。あとライン入力からの録音レベルについても、細かく調整できるタイプの機種が望ましい。これができれば、アンプ等を通さずにチューナーとレコーダーとを直結できるからである。結果、以上3つの条件に合うオリンパスの DS-901 という機種を選び、Amazon で新古品を買ってみた。試しに番組を録音してみたが、もともと自宅にあったサンヨーの古いICレコーダーと比べても、情報量が多く十分にクラシック向けである。

 で、最後は、タイマー操作ということになる。ICレコーダーの方には、上記のようにタイマー機能がついている(※2)。あとはチューナーの電源を On/Off させる方法だが、我が家には30年物のソニーのタイマーがあって最初はこれを使うつもりでテスト録音もしてみた。しかし、常時使用するにはいかにも古いので、何か代わりのものがないかと考えていたら、偶然、スマートコンセントにタイマー機能がついているものを発見した(Meross WIFIスマートプラグ)。これなら、平日(月~金)の午後7時30分~9時10分にチューナーをつないだコンセントを通電させるといったスケジュール管理もお手のものである(これは「ベスト・オブ・クラシック」の放送時間)。しかもスマホの専用アプリを使って操作ができるので、出先から通電を確認したり、もし放送時間が変更になったりした場合などにも対応が可能だったりと、何かと安心感がある。自宅にWIFI環境があるということが必須だが、1個2千円を切る価格でこんなことができるのは驚きだ。サイズもちょっと大きめの電源タップくらいで、まったく邪魔にならない。

 ということで、こうして我が家のエアチェック体制が復活した。土曜日夜の「N響 ザ・レジェンド」で、マタチッチのブルックナーの5番(1967年11月22日、東京文化会館で収録)という珍しい音源が放送されたので早速録音してみたが、やはりライヴは良い。廉価なイヤホンでも十分空間が広がり、楽しめる。たまたま本日3月1日は、NHK-FM の放送開始から50周年ということで、お昼からずっとクラシック番組を放送している。我々の世代のノスタルジーと言われればそうかもしれないが、ちなみに今月の『ステレオ』誌(音楽之友社)は、LPレコードとカセットの特集。アナログ復活の機運は、なかなか根強いものがあるのではないか。ただ、さすがに上記、特番を全部録音するという気にはならなかったのだが、こういうときこそサイマル放送の出番ではないかということで、このお話は例によって(その2)ということにします。

※1 この頃のヤマハのチューナーは、アンテナ端子が「PAL」という種類で、現在、テレビ等でも標準的に使われている「F型」コネクターとは互換性がない。ただ Amazon 等で、「F型>PAL」の返還コネクターが安く売られていて、これを使えば特別な電線処理はいらない。
※2 これも買ってからわかったのだが、DS-901 のタイマー録音機能では、「毎日」という設定があって、これは文字通り毎日同じ時間帯で録音できるわけだが、他の機種にあるような「曜日選択」ができない。なので「ベスト・オブ・クラシック」のように平日しか放送がないような番組の場合、厳密には対応できない。一応、土日になるとタイマー録音設定をオフしているが、この場合、せっかく設定した内容がクリアされてしまう(泣)。

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2012年10月30日 (火)

音楽の愉しみ(その1)

 本日のテーマは、カテゴリー名そのままの「音楽の愉しみ」。

 音楽の愉しみ方と言えば、コンサートに出かけたり、レコードやCD、最近ではDVDやネット配信等で演奏記録を映像付きで鑑賞する、というのが一般的なのだろう。あるいは楽器ができる人なら、自分で演奏してみるとか。僕の場合も、もちろんそれらが基本であるのは間違いないのだが、とかくクラシック音楽となると、演奏会場に出かけていったり(割と高価、時間制約あり)、再生機器や楽器(こちらも結構、高価)を購入したりと、投資と手間がかかるものである。そうではない、もっと気軽な、毎日の生活の中でできる愉しみ方だってたくさんある、というのが、今回のお話。

「毎日クラシック流・音楽の愉しみ 1」楽章冒頭の音程当て
 これは音楽を聴いているとき、次の楽章の冒頭の音程を当てる「ひとりクイズ」である。交響曲やソナタなど多楽章形式の曲で、ある楽章が終わり次の楽章が始まるまでのインターバル間に、冒頭のテーマを頭に中で鳴らしてみる。それだけのことなのだが、流れてきた音と頭の中の音とがぴったりと合ったときは、結構、快感である。またこれは、なれてくると誰でも正答率が高くなると思われる。というのもクラシック音楽、特に古典派の音楽では、各楽章の調性選択には一定のルールがあり、基本的には前楽章の終了の和音から次の楽章のテーマが導き出されるようにできているからである。ちなみにベートーヴェン以降はそうしたルールを基本に、それをいかに踏み外していくかが、作曲家の手腕になっているのだが。

「毎日クラシック流・音楽の愉しみ 2」テーマ曲等の音程当て
 その1の応用編で、今度はラジオやテレビで流れてくるテーマ曲の冒頭の音程を当てるというもの。例えば、平日午後7時30分から NHK・FM の「ベストオブクラシック」を聴くとしよう。「7時のニュース」が終わりこの番組のテーマが流れ出るまでの一瞬の無音時間中に、テーマ曲の音程を想像してみる(この曲はオリジナルで、北爪道夫氏の作曲らしい)。NHK の「きょうの料理」のテーマ曲とか(これはなんと冨田勲氏作曲)、同じく NHK の野球中継のテーマ曲(古関裕而氏作曲)など、有名テーマは皆さんたいてい憶えていると思うので、ラジオやテレビを見ているときなら、いつでも手軽に楽しめる。ただしこれには前楽章とのつながりがない分、ちょっと難易度はあがるかもしれない。でも絶対音感のない僕の場合でも、上記の「ベストオブクラシック」の冒頭は、最近、ほぼ当てられるようになってきた。というより絶対音感のある方は、残念ながら愉しみ1・2の音程当ては、まったく愉しめないと言うべきか。これはかわいそう・・・笑

「毎日クラシック流・音楽の愉しみ 3」交響曲等の主題当て
 これは厳密には僕のオリジナルではないが、やはり「ひとりクイズ」もの。もう20年以上前の話になるが中日新聞(東京新聞)のコラム記事で、ある音楽専門ではない大学教授の方が書かれていたものである。この方(残念ながらお名前は失念)は、新幹線などで出張する際に、好きな曲のミニスコアを持参し、それを読みながら好きなテンポで曲を脳内再生して愉しんでいるとのこと。これはある意味、ちょっとマニア向けの話なのだが、そのあとに、スコアが手元にないときには、交響曲等の楽章ごとのテーマ(第1主題、第2主題等)を思い出していく「遊び」をしていると書かれてあった。このコラムで例に挙げられていたのは、ベートーヴェンの交響曲全集。実際にやってみると、なかなか難しい。第3番、第5番、第9番あたりは比較的に簡単に思い出せるかもしれないが、第1番とか第2番あたりになると第2楽章やスケルッツオの第2テーマあたりは即答できなくて、「うん?」という感じになる。僕の場合も、曲頭から順に鳴らしていかないと出てこない楽章がある。これはブラームスの4つの交響曲や、モーツァルトのウィーン時代の交響曲あたりでも十分愉しめるクイズだし、マーラーやブルックナーになればもっと難易度があがり、上級者だって手こずるはずだ。しかもまさにいつでもどこででもできるので、音楽ファンが待ち時間をつぶすには最適だろう。皆さんも一度、チャレンジしてみては。

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2011年12月21日 (水)

フルトヴェングラーもカラヤンも

 やや旧聞に属する話だが「モーストリー・クラシック(産経新聞社)」という雑誌の10月号で、音楽評論家等による指揮者の格付け投票があった。僕自身は、名盤ベスト3とか何とかベスト10とかいったこの種の投票に以前ほど興味は持てないので正直どちらでもいいようなものだが、それでもここでカラヤンがフルトヴェングラーを抑え1位になっていたのには、さすがに少しばかり驚いた。当の関係者たちでさえ戸惑っている様子が、いくつかの記事から十分読み取れる。これが読者(&書き手)年齢の高い「レコード芸術」になると、まだまだフルトヴェングラーに分があると思われるが、それでも万年1位と思われていたフルトヴェングラーがついに2位になったことには、昭和派の僕としても感慨深いものがある。

 ちなみにフルトヴェングラーといえば、今月、楽しみに待っていた吉田秀和氏のフルトヴェングラー評を集めた編集本『フルトヴェングラー』が河出文庫から出た。この本にも書かれているが、吉田氏は1953年から54年にかけて、ヨーロッパで最晩年のフルトヴェングラーを何回か聞いていて、彼の演奏実践の様子を知るには非常に参考になる。が、近年では、評論家の皆さんもほとんど戦後生まれであり、フルトヴェングラーの実演を聞いた人の発言に触れることがなくなっていることを考えれば、先の投票結果はまあ当然といえば当然のなりゆきなのかもしれない。その順位づけや優劣は別にしても、これからスクラッチノイズと伝説の奥から、霧が晴れるように彼の音楽の裸像が立ち現れてくる時代にようやくなるような気がする。

 その逆に、現役時代こそ毀誉褒貶定まらなかったカラヤンの方も、ようやく冷静にその音楽を聴ける環境が整ってきたとも言えないか? 実際、今世紀になって再発売された70年代のチャイコフスキー交響曲集第5番・第6番(蘭Disky)など爆発的に売れたという。現在の指揮者界が巨匠不在、スター不在のせいもあるけれど、「意外にいけるんじゃ?カラヤン」というのが、今の若い人たちの感覚なのだろう。

 「フルトヴェングラーかカラヤンか」

 20世紀を代表するこの二人の指揮者は、一見、まったく対照的な生き方や音楽性ゆえに、いつも「あれかこれか」という二者択一の選択の対象にあったように思う。『フルトヴェングラーかカラヤンか』という直接的なタイトルの本だって2冊もあるくらい。評論家やマスコミがそのような比較記事を書き散らした結果、それぞれのファンも巻き込んで「カラヤンには精神性が欠けている」「フルトヴェングラーなんてもう古い」などと互いに言い合っていた時代があった。でも、今になってみれば、フルトヴェングラーの演奏すべてがすばらしくてカラヤンはすべてダメとか、あるいはその反対とかいう考えの方が明らかにおかしい。僕自身のことを顧みても、カラヤンの「こうもり」を楽しみながら、「バイロイトの第九」も聴くという風に、その時々に応じ、自由に二人の天才の作り出す音楽に魅せられてきた。結局のところ、音楽の豊かさの前では、「フルトヴェングラーかカラヤンか」の一方を選び、一方を捨てるなどという選択肢は、元々ないに等しいのだ。だから僕が書くとしたら、きっとこんなタイトルの本になるしかない。

 「フルトヴェングラーもカラヤンも」!

※さっき、「名盤ベスト3」等に興味がないようなことを書いておいて、すぐにこれじゃどうかと思うけれど(笑)、参考までに・・・
僕のフルトヴェングラー・ベスト3は
1 シューベルトの『グレート』(DG)
2 モーツァルトの40番(EMI)
3 ブルックナーの9番
カラヤンのベスト3は
1 『トリスタン』(EMI)
2 マーラーの9番(Live)
3 ヴェルディのオペラ、『ファルスタッフ』(DVD)か『ドン・カルロ』(EMI)

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2011年7月31日 (日)

ベートーヴェン第二交響曲の編曲版

 先週末、1時間足らずだが空き時間があったので、久しぶりに地元では大手の書店に入った。文庫の棚の前をうろうろしているうちに、ふと店内のBGMが耳に入ってきた。ピアノと弦楽での演奏で、しかもとても聴きなじみのある曲である。にもかかわらず一瞬、曲名が出てこない。古典派のスケルッツオぽい音楽なのだがとしばし考えていると、音楽が次のアレグロ楽章に移り・・・ここで、ようやく「わかった!」

 ベートーヴェンの交響曲第2番ニ長調。「火を吐くような」とよく形容される決然とした開始部を持つ音楽。当時としては、最大の規模を誇る長大な終楽章だ。気がついてみれば何のこともないが、田舎の書店のBGMにこうした編曲もの、しかもいかにもマニアックな曲がかかるなんて思ってもいないし、意表をつかれた感じだ。誰が選曲しているのだろうか?とレジのあたりを見渡すのだが、当然のことながらアルバイトらしき女の子しかいない。まあ、一般的には有線放送の可能性が高いのだろうが、ちょっと得をした気分で店を出た。

 帰って調べてみると、なんとこれはベートーヴェンのオリジナル編曲らしい。ナクソスにも数枚このバージョンの演奏があるので全曲を聴いてみた。ゆったりとした序奏からアレグロに入るあたりもとても自然で、こちらがオリジナルだと言われてもまったく違和感のないできだ。特に終楽章はいくつかの演奏を聴きくらべたりして十分、堪能した。

 ちなみにまたまた個人的な話だが、筆者は少し前にモーツァルトのリンツ交響曲を、モーツァルトの弟子フンメルがピアノ、フルート、ヴァイオリン、チェロの四重奏に編曲したバージョンのCD(Boston Skyline, BSD144)を中古で手に入れ聴いたばかり(ワールド・プレミエ・レコーディングズとCDにはある)。こうした編曲版にはちょっとおもしろい裏話があって、フンメルがモーツァルトの後期交響曲6曲をピアノ(と室内楽)用に編曲した楽譜にはメトロノーム表示があるのである。当然のことながら、モーツァルトのオリジナルにはメトロノーム表示はない。当時、モーツァルトの「アダージョ」や「プレスト」が一体どれくらいの速さで演奏されていたかは、今の我々は様々な間接資料からしか想像するしかないのだが、「フンメルはモーツァルトの音楽と、そこから生じた伝統に対して、我々がもっていないような種類のアクセスをもっていたのであるから、彼の記したテンポを十分に検討せずに無視するわけにはいかない。」というのが、モーツァルト研究の大家ニール・ザスラウ氏の見解だ(『モーツァルトのシンフォニー II 』小学館・刊)。こうした点からいっても、編曲ものだといって軽視はできない、やはりそれなりの聴きどころというものがある。近頃は、そういうことを思わないではいられない。

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