2015年12月21日 (月)

「みちのくに盤友あり」

 今年になって、出張で3回ばかり仙台市を訪れる機会があった。仙台と言えば、我々の世代には忘れられないLP専門店がある。2回目の訪問時に、近くまで行ったので、探してみることにした。JR仙台駅から北西方面、地下鉄南北線・北四番丁駅から徒歩では数分という場所に立つ雑居ビルの一階に、そのお店、「仙台レコード・ライブラリー」はあった。

 古くからのレコードファンなら、「みちのくに盤友あり」という雑誌広告を憶えていらっしゃるかもしれない。僕が高校生の頃から「レコード芸術」の広告欄で、その名前だけは知っていた老舗の中古レコード専門店である。今回、初めて訪れてみると、小学校の教室くらいのスペースにクラシックを中心に、ジャズ、ロック等のLPレコードが集められている。奥の作業スペースにある棚にも、ぎっしりLPが並んでいて、その品揃えはおそらく日本有数と言える。
 専門店と聞けば、ちょっと立ち寄るには敷居が高く感じるかもしれないが、店先に立つ御店主の奥方らしい方が「何かお探し物ありますか?」と優しく応対していただけるので安心だ。

 僕が訪れたときは出張業務の途中だったので、それほど長居もできず、たまたま見つけたヘルムート・ミュラー=ブリュールが指揮したモーツァルトのセレナード交響曲のLP(そんなのがあるとは知りませんでした!)と、ジャズの古い再発盤を手に、レジに向かった。
 「震災の時はだいじょうぶだったのですか?」とお聞きすると、「ここはだいじょうぶでした。でも以前入っていた建物だったら、つぶれてレコードごと処分されていたかも」とのお返事。
 「ぬくもりの感じられる音がいい」「ジャケットが斬新」・・・今、LPレコードは、若い方を中心にちょっとしたブームになっていて、安価なプレーヤーも続々と発売されている。この機会に、震災を生き延びたレコード盤たちに、ぜひ会いにいきませんか?

ネット通販も受け付けている。
http://sendai-record.com/main/

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2013年2月25日 (月)

クラシック散歩(本郷編)その後

 先週、本郷の輸入楽譜店「アカデミア・ミュージック」を訪れた話を書いた。実は、1年前に来たとき、2006年暮れにこの「クラシック散歩」で訪れた本郷三丁目駅近くのCD店「CDショップ・NOMURA」さんがなくなっていたようだったのだが、そのときは時間もなく確かめることができなかった。今回、駅周辺を少し歩いてみて、やはり記憶の場所に見当たらないようなので、ちょっと調べてみた。まず、隣のビルにある古書店「大学堂書店・本郷三丁目店」に入った。年配のご夫婦でやっており、あまり分類されておらず床に山積みになっている本も多い。でもその山の中に往年の「古典文庫」のシリーズなどおもしろい本も結構あったし、天井近くには久保田慶一氏の労作『C・P・E バッハ研究 ー改訂と研究ー(音楽之友社)』などという珍しい本もあった。今回はたまたま見つけた吉田秀和氏の『今日の演奏と演奏家(音楽之友社)』を手にレジに向かい、おかみさんらしい方に訊いてみた。
「ここを出たところにあった<のむらさん>っていうレコード屋さん、もうやめられたんですか?」
「えっ?<のむらさん>? ああ、電気屋さんがやっていた店ね。近くに電気屋さんの持ちビルがあって、そこに移ってしばらくやっていたけど、すぐやめたみたいね」
「そうなんですか」
 その後、お店をやっていた方の消息なども少しお聞きしたが、まあそれはプライバシーの問題もあるだろうから、ここでは書かないでおく。
「うちも最近は本も売れなくなって、仕入れもなかなかできないんですよ」
「インターネットとかには在庫情報出してないんですか?」
「ネットはしないの。あえてやってないの。昔は定期的に在庫目録作ってたし、仕入れてくればすぐ売れたんだけど・・・」
などなど、しばらくレジ前で古書業に関する話を聞いていた。どこもお店を続けていくのは大変だ。「どうも、ありがとうございました。お店、がんばってください」とお礼を言って「大学堂」さんを出た。

 その後、ちょうど遅目の昼食をと思いたち、やはり駅近くの「名曲喫茶 麦」に入ってみた。通りから地下に向かう階段を降りると、予想どおり入り口からして年季の入った店構えで、いい感じである。お店に入って右側の小部屋に座り、コーヒーとピザ・トーストを頼んで、しばしあたりを見渡す。やはり年配のご夫婦がきりもりしている(ウエイターをしている学生さんらしき男の子は、お孫さんのようにも見えたが違うだろうか)。店内は、待ち合わせ場所にしている紳士グループや、サラリーマンらしき人で結構、混んでいる。音楽は、クライスラーの名曲集がかかっていた。<名曲喫茶>にしては音楽の音が小さいなと思っていたら、あとでトイレを借りたとき気がついたのだが、実は入って左側の小部屋に座れば、ちゃんと音楽が聴けるという仕組みになっていた。これは残念。余談だが、トイレに入ると真っ正面に昔、私もレコード屋でよくもらった「ドイツ・グラモフォン」の重厚なモノクロームのカレンダーが貼ってあり、便器に向かうとすぐ目の前で2月のタレントであるバーンスタイン氏が私をじっと見つめている・・・というシチュエーションが待っている。これはどうも落ち着かない(笑)。やはりレジでお金を払うときに、<のむらさん>のことを尋ねてみた。
「あー、やめてもう10年くらい経つんじゃない?」と奥からご主人。
「そんなことないよ。そんな昔じゃない」と奥さん。
「あ、僕も6年くらい前に来たときは、まだやってらっしゃったんです。電気屋さんがやってたお店とか」
「そうそう。ご主人は時々、ここにも来たんだけどねえ」
「音楽がお好きそうでしたからね」・・・

 「CDショップ・NOMURA」さんはもうないけれど、本郷に来たときは「大学堂」さんも「麦」さんも、ぜひまた寄ってみたいと思う。

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2013年2月24日 (日)

ディスクユニオン神保町店

 先週始め、上京したときに買ったCDから。

 お昼過ぎ、いつも訪れるディスクユニオンのお茶ノ水クラシック館に立ち寄ったら、たまたま550円以下の中古盤(の一部)が100円になるというセールをやっていた。以前も同じようなセールをやっていて、たまにしか行けない割には巡り会わせがいい方なのかもしれないが、新しい盤が追加されるのを待つようにしていい大人のお客さんがCDケースをわしづかみにしている姿は、正直、見ていてあまり気持ちがいいものではない。前回など100枚以上を山積みにして買っている人さえ見かけた。それでも1万円くらいにしかならないのだから、確かにお得なのだろうが、「それ本当に全部聴くの?」と訊いてみたい気がする。

 そうした熱気にあおられて、100円盤は以前から買おうと思っていながら買いそびれていた内田光子さんの「クライスレリアーナ」や、LPで聴き込んだバルビローリ/BPOの「マーラー/交響曲第9番」、ペレーニ独奏の「ハイドン/チェロ協奏曲集」ほか数枚を買っただけ。むしろ通常売りの棚から、これも以前から欲しかったコルボの名盤・モンテヴェルディの「宗教的・倫理的な森」(外国盤1700円)を買って、まだ陽のあるうちにお店を出た(実は、つい先日、この名盤のLP3巻セットを、オークションで1000円で買ったばかり。こちらには詳しい曲目解説と、後藤暢子氏による対訳が載った今では考えられないような豪華な解説書がついている)。これから春先に向けて、じっくり聴いていきたい。

 さてお店を出たあと、歩いて古書街の方にビルのあいだを抜けていき、何件か古書店を覗いたあと、たまたま同じディスクユニオンの神保町店の前に通りかかったので、中に入ってみた。入ったのは初めて。店構えはお茶ノ水クラシック館よりずっと狭い。1階はバロックもの、声楽、ジャズ、そして音楽関係の古書が中心で、普通の中古店という印象であった。が、特に期待せずに2階にあがってみたら、そこは3面の壁いっぱいと2連の中棚を使って、かなりの品揃えがあったのだ。お茶ノ水のお店は作曲家別が基本だが、ここは曲種別になっていて、しかし交響曲などはむしろこちらの方が商品の数が多いように思える。今回も2年以上ずっと探していた鈴木秀美指揮オーケストラ・リベラ・クラシカの第16回の公演ライヴを見つけたのは大収穫であった(しかも2枚組600円)。この盤には、モーツァルトのピアノ協奏曲ニ短調 K466 が収録されていて、ソリストはオランダ古楽界の重鎮スタンリー・ホッホランド氏である(このCDではヴァルター・モデルのフォルテ・ピアノを弾いている。この日、『モーツァルトはどう弾いたか(丸善ブックス)』で有名になった久元祐子さんが、この本の前に書かれた『モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪(音楽之友社)』の中古本が1階の売り場で安く売っていたのでこれも購入したが、この本にもちょうど5オクターブの鍵盤を持つこのヴァルター製のフォルテ・ピアノの話が出てくる)。ホッホランド氏は、もう20年近く前になるが私の地元の音楽祭に数年間、出演されていた時期がある。私も少しお話をしたことがあるが、とても穏やかなお人柄で、普段の姿からはとてもそのような巨匠とは見えない。録音も極めて少なく、ブリリアントが出している古楽器による「ハイドン ピアノ・ソナタ全集」が一番メジャーだろうか。あとはこの「アルテ・デラルコ」シリーズ(TDK)に数枚のソロ・室内楽の録音がある。このCDはホッホランド氏の貴重な協奏曲録音であり、そこから聞こえてくるのは紛うことのない「本物」の音楽だ(そういう言い方は私の好みではないが、氏の演奏の前ではそのように言うほかはない)。なぜこのような名盤がずっと品切れ状態なのかは理解できない。

 レジで「お茶ノ水のお店しか知らなかったのですが、こちらもなかなか充実した品揃えですね」「ええ、ちょっと前からクラシックを増やしてます」「そうですか。がんばってください」という会話をして、すっかり暗くなった神田の町に出た。次回、神田に来たときも、また覗いてみることにしよう。

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2006年12月14日 (木)

クラシック散歩(本郷編)2

 ということで、本郷つながりで、今回、本郷三丁目の駅の近くで偶然見つけた小さなCD店も紹介したい。「CDショップ・NOMURA」さんというお店だが、入り口すぐ左に、ソニーが10年前に出していたClassic Super Valueという1000円盤のシリーズが、他社の廉価盤シリーズといっしょにずらりと50枚以上並んでいるのが目を引く。オーマンディやセル、スターンなど往年のスター演奏家が多く登場しているもので、このシリーズをこんなに揃えているお店は初めて見た!

 中に入ると、一番奥がクラシックコーナーで国内盤がほとんどだがお店の4分の1ほどを占めている。ウラッハ(クラリネット)、バリリ弦楽四重奏団などで有名なウェストミンスター盤(現行CDの一つ前のシリーズ、すでに廃盤)が、かなりの数残っている。ほかにハルモニアムンディ、テレフンケンなどの古い録音の復刻CDも、しっかり在庫している。おそらく長年しっかりLPを聴き込んだ店主の方の趣味で、メーカーに対しこまめに発注を出しているのだろう。加えて、最近、話題となっているカイルベルトのステレオ・ライブ「リング」や、ワルターのブラームス交響曲全集(ニューヨーク・フィルとの!)など、こだわりの輸入盤も数点、平積みになっているあたり、かなりのてだれと見た。

 結局、今日のところは、先のソニーの廉価盤シリーズからバーンスタインがLPOと入れた2回目の「春の祭典」盤(1050円)と、スプラフォンから今年CD化されたプラハ版の「ドン・ジョヴァンニ」(3150円)を手にレジに向かった。初老の店主の方と若い方(息子さん?)がカウンターにいらっしゃった。

「たくさんいいCDを残してますね」と私。
「ありがとうございます」
「ずっと長く続けてくださいね。また来ます」

というようなことを短く言い交わしてお店を出た。

 メガCDショップやオンラインショップも便利だけど、こういうお店こそまたぜひ訪ねてみたい。次は、室内楽の棚にあった、ピアニストのヘブラーがBPOのコンサートマスターだったミシェル・シュヴァルベらと入れた、モーツァルトの「ピアノ四重奏曲集」を買おう。LPでさんざん聴いたなつかしい盤だ。

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2006年12月13日 (水)

クラシック散歩(本郷編)1

 週末から二泊三日で東京に出張していたので、ちょっと久しぶりの更新。最近、上京するときは、後楽園のLaQua近くの水○橋グランドホテルを常宿にしている。ナイターシーズンにはあたりは騒然とすることもあるけど、ここを選ぶのは、飛行機とのセットで安くなることと、僕がよく訪れる「アカデミア・ミュージック」という輸入楽譜専門店にとても近いからだ。以前は本郷通り沿いにあったのだが、今は春日通りに移転したので、ホテルから5分ちょっとでたどりつける。ここは楽譜好きには、まさに天国のようなところだ。何万点という楽譜を手にとって見ることができ、在庫のないものはもちろん簡単に海外発注してくれる・・・ここでは、ないもの以外は(つまり出版されていないもの以外は)なんでも手に入ると思って間違いない(笑)。

 自分が演奏をするのではなく単なるCDの愛好家としても、例えば、新モーツァルト全集のペーパーバック版(全作品の楽譜が載っている!)、同じくモーツァルトのレクイエムの諸版(バイヤー版、モンダー版、レヴィン版等)、ベートーヴェンのベーレンライター版交響曲全集スコア、ブルックナーの2番シンフォニーのキャラガン版スコア、バッハの無伴奏チェロ組曲手稿譜のファクシミリ版、モンテヴェルディの「ポッペアの戴冠」のスコア、アルヴォ・ペルトの諸作品の楽譜、ウィーン国立歌劇場の戦後の上演記録集(歌手からも指揮者からも引ける!)、ケッヘル目録などなど、興味をひかれるような楽譜がたくさん見つかると思う。ちなみに僕のアカデミアで手に入れた秘蔵品は、モーツァルトのレクイエム自筆譜のカラー・ファクシミリ版。モーツァルトの自筆(未完成)と弟子のジュスマイヤーの補筆完成版の2つがセットになっている。かなりリアルな復刻なので、モーツァルトのペンが止まったラクリモザの最後のページなどは、さすがに壮絶な印象(コンスタンツェに依頼された弟子のアイブラーが2小節だけ書き込んだ跡もはっきりわかる)。1997年に、かの海老澤敏氏が僕の地元であった音楽祭に招かれて小講演会をしたときにも、資料としてこの本を持ってこられていた。実はこのファクシミリが日本で売り出されたとき、解説の日本語訳がつけられる計画があって、その訳者として海老澤氏の名前が挙がっていたはず。しかし、この計画は、いまだ果されていないはずだ(笑)。もう、いいけどね。

 今回は、少年モーツァルトがローマで一度聴いただけで譜面を書き取ったというアレグリの「ミゼレーレ」の楽譜を探しにいったのだが、合唱の棚にすぐに見つかった。もし見つからなくても、曲名などを告げれば、大変詳しいお店の方が、すいすい調べてくれる。遠方の客向けには、「アカデミア・ニュース」という月刊の新着カタログもあり、これはネット上でPDF版としても提供されているというサービスぶりである。このサイトでは、オンラインで楽譜の検索もできるので、ぜひ一度見てほしい。https://www.academia-music.com/

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